
※機材提供:GMKtec
GMKtecの「NucBox K11」は、Ryzen 9 8945HS / 32GBメモリー / PCIe 4.0 SSD / Windows 11 Pro搭載のミニPCです。記事執筆時点の価格は9万円台後半。値段的には若干高めの印象ですが、高い性能と豊富な機能を実現している点を考慮すれば、決して高すぎるわけではありません。むしろお得感のある高コスパな機種と言えます。

GMKtecのハイエンド型ミニPC「NucBox K11」

一般的なミニPCよりもやや大きめ

天面ファンがRGBイルミネーションで光る点が特徴的

モバイルディスプレイと組み合わせると、とてもコンパクトなデスクトップ環境を作れます ※写真のディスプレイはは15.6インチ
主な特徴
発売 | 2024年 | 価格 | 9万6000円前後 |
---|---|---|---|
OS | Windows 11 Pro | ライセンス | OEM版(問題なし) |
CPU | Ryzen 9 8945HS(Zen4) | メモリースロット | 2 |
グラフィックス | Radeon 780M(RDNA3) | SSD増設 | 可能 (M.2 Type-2280) |
メモリー | DDR5-5600 32GB(16GB×2) | Type-C | USB 4×2(PD/DP) |
ストレージ | 1~2TB M.2 PCIe 4.0 SSD | 電力制限(標準時) | PBP:54W / MTP:54W |
有線LAN | 2.5Gb×2 | 騒音 | 小さい~普通 |
性能的には、普段使いや事務作業には十分すぎるほどでした。ゲームも軽めのものであれば、普通にプレーできます。騒音は基本的には静かであるものの、ファンの振動が少し気になるかもしれません。
この記事ではメーカーから提供された実機を使って、外観や性能、実際の使い心地などをレビューします。
おことわり
このレビュー記事では、実機を10日間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。
スペック
発売日 | 2024年 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | Ryzen 9 8945HS(Zen4、8コア16スレッド) |
NPU | 最大16TOPS |
メモリー | DDR5-5600 32GB ※16GB×2、最大96GB |
SSD | 1 / 2TB PCIe4.0 x4 NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 780M(RDNA3、CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth5.2、有線LAN(2.5Gb)×2 |
インターフェース | USB4(PD/DP対応)×2、Oculink×1、USB3.2 Gen2 Type-A×2、USB2.0×2、HDMI×1、DisplayPort×1、有線LAN×2、ヘッドホン端子 |
ドライブベイ | なし |
スロット | M.2スロット×3(ストレージ用×2、Wi-Fi用×1) |
付属品 | VESAマウンタ、HDMIケーブル、電源アダプターなど |
サイズ / 重量 | 幅132×奥行き125×高さ58mm / 523g |
Windowsのラインセンス
OSには、Windows 11 Proが使われています。ライセンスは通常のOEMライセンスです。ミニPCでは個人利用不可のボリュームライセンス(VL)が使われていることがありますが、NucBox K11のライセンスは問題ありません。

Windows 11 Proの正規のOEM版が使われています
技適マークについて
無線通信機器に必要な技適マークは、本体底面部にシールとして貼られています。

本体底面部に技適マークを確認
上記番号は「総務省電波利用ホームページ」の検索結果で「K11」(他モデルと共通)のものとして登録されているのを確認しました。
関連リンク
PSEマークについて
電源アダプターには「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わすPSEマークがプリントされていました。届出事業者名は「株式会社神州」で、国内での届け出を別の業者が担当したものと思われます。

電源アダプターのPSEマーク
システムのフルスキャン結果
検証前にWindows Defenderのフルスキャンを実施し、検知可能な脅威が存在しないことを確認しています。

Windows Defenderのフルスキャン結果
価格
NucBox K11の通常価格は12万9000円ですが、ときおり実施されるキャンペーンやクーポンによって、値段は大きく変わります。2025年2月時点では、だいたい9万円台半ばあたりとイメージしておくといいでしょう。特に楽天の公式ショップでは、ポイントも還元されるのでお得です。
価格
販売ショップ | 価格 |
---|---|
アマゾン | 9万6750円 |
楽天 公式ショップ | 9万6750円 |
※2025年2月19日時点
パッケージ

NucBox K11のパッケージ

箱の中身

付属の電源アダプターは120.08Wの丸口タイプ。重さは510gとちょっと大きめ

電源アダプターのサイズ感

付属のHDMIケーブル

本体をディスプレイ背面に取り付けるための、VESAマウント
VESAディスプレイへの取り付け方法

本体底面部のゴム足をふたつはがします

付属のマウンタをネジで取り付け

付属のネジ(大)を、ディスプレイ背面のVESA穴に取り付けます。このとき、最後まで締め切らないこと

ネジの出っ張りに、マウンタの穴を引っかけます

必要に応じてネジを締めれば取り付け完了
外観

NucBox K11は非常にコンパクトなミニPCです

ただし、ほかの一般的なミニPCよりもわずかに大きめ

厚みもそこそこあります

スマホ(Google Pixel 9 Pro XL)とのサイズ比較

サイズの実測値

底面部のゴム足を含めた設置時の高さは61.5mm

天面部には半透明のアクリル板がカバーとして使われています

電源を入れると天面ファンのRGBイルミネーションが光ります

天面カバーは光沢仕上げのため、指紋の跡や映り込みが目立つ場合があります

底面部

本体側面には質感と冷却効果の高い金属素材を使用。高級感のある仕上がりです

重さは実測で619g
冷却性能の高い金属ケースを採用

ケース側面に金属素材を使用。従来の樹脂(プラスチック)製ケースに比べて高級感が増しているほか、冷却性能も高まっていると思われます
インターフェース構成

前面のインターフェース構成

背面

右側面にはなにもありません

左側面も同様です
Oculinkについて
Oculinkとは、グラボやSSDなどで使われている「PCIe」接続を、専用のケーブルや端子を使った外部接続で利用するための規格です。とりあえずはシンプルに「ミニPCでデスクトップPC用のグラボを使うためのもの」と考えるといいでしょう。

NucBox K11では前面にOculink端子が用意されています
Oculinkを利用するには、別途eGPU(外付けグラボ)が必要です。今回はRX 7600M XT搭載のeGPUドック「GMKtec AD-GP1」(実売価格7万7000円前後)を利用したところ、グラフィックス性能は3倍以上に向上しました。デスクトップPC向けのRTX 4060と同程度で、比較的重いゲームでも普通に楽しめます。

NucBox K11と「GMKtec AD-GP1」をOculink端子で接続

eGPU非使用時と比べて、グラフィックス性能が大幅アップ

内蔵グラフィックス(iGPU)利用時とOculink経由のeGPU利用時のグラフィックス性能差

モンハンワイルドベンチも、フレーム生成が有効ならフルHDの最高画質でも快適
USB PD給電について
USB4端子は、映像出力とUSB PDによる給電にも対応しています。ただしUSB PDについては、手持ちの充電器(Anker 717 Charger 140W)とケーブル(Anker USB-Cケーブル 240W)では動作しませんでした(途中で電源が切れる)。もしかすると、機器の相性があるのかもしれません。とりあえず、USB PDでの利用にはなんらかの条件が必要かもしれないと考えたほうがいいでしょう。
分解・パーツ交換について
本体の分解方法

本体内部を見るには、まず上部のアクリル板を外します。ネジは使われていないので、手で捻るだけでOK

アクリル板を外した状態

続いて、上部4ヵ所のネジを外します

パネルを外す際は、空冷ファンのケーブルを引きちぎらないよう注意

上部パネルを外した状態。これ以上分解するのはちょっと難しそうに感じたので、今回はここまで
メモリーの増設について

メモリースロットはこの部分

スロットは2基で、対応規格はDDR5-5600 SO-DIMM(ノートPC用)

検証機で使われていたメモリー ※製造タイミングによって、異なるメモリーが使われている場合があります
SSDの増設・換装について

メインのSSDはこの部分

M.2スロットは2基用意されています。どちらもPCIe 4.0のType-2280

SSDには薄手のヒートシンクが使われていました。これ以上厚いと、干渉して収まりきらないかもしれません

検証機で使われていたSSD ※製造タイミングによって、違うSSDが使われている場合があります

SSDのS.M.A.R.T.情報

アクセス速度の計測結果。PCIe 4.0接続タイプとしてははやや低速ですが、SSDの公式スペック上の最大速度を上回っています。発熱を抑えるために、やや遅いSSDを選んでいるのかもしれません
Wi-Fiまわりなど

Wi-FiカードはインテルのAX200NGW。vPro非対応の「02HK705」です
メンテナンス性

マザーボード全体。メモリーやSSDにはアクセスしやすいのですが、CPUクーラーには触れられません。ホコリなどがたまった際は、スキマからエアダスターなどを使って吹き飛ばす必要がありそうです

マザーボード用のコイン電池(ボタン電池)はこの部分。長期間使用してPCが起動しなくなった際は、この電池を替えてみてください

メモリー・SSD冷却用のファンは、いつでも簡単にメンテナンス可能です

使われている空冷ファン
UEFI(BIOS)設定画面

起動直後のロゴ表示画面でESCキーを連打するとUEFI(BIOS)画面が表示されます

UEFI(BIOS)画面の「Main」タブ

「Advanced」タブ

「Security」タブ

「Boot」タブ

「Save & Exit」タブ

「Save & Exit」タブ
CPUの電力設定
「Main」→「Power Mode Select」から、CPUの消費電力モードを選択できます。標準は「Balance」で、「Peformance」を選べばCPU性能を底上げすることが可能です。「Quiet」を選ぶと、駆動音を抑えられます。

CPUの消費電力設定を選択可能
電力設定
項目名 | 概要 | PBP / MTP |
---|---|---|
Quiet | 性能を抑えることで駆動音を低減する | 35W / 35W |
Balance ※標準 | 標準のモード | 54W / 54W |
Performance | もっとも高性能だが騒音も大きい | 65W / 70W |
※「PBP」……プロセッサ・ベース・パワー、「MTP」……マックス・ターボ・パワー
ベンチマーク結果
検証機のスペック
CPU | Ryzen 9 8945HS(Zen4、8コア16スレッド) |
---|---|
メモリー | DDR5-5600 32GB ※16GB×2 |
ストレージ | 1TB PCIe4.0 x4 NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 780M(RDNA3、CPU内蔵) |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「バランス」に設定した上で、UEFI(BIOS)設定から電力モードを「Balance」と「Performance」、「Quiet」に切り替えて実施しています。付属の電源アダプターは接続した状態です。
電力設定
表記 | 概要 | PBP / MTP |
---|---|---|
35W | Quietモード:性能を抑えることで駆動音を低減する | 35W / 35W |
54W | Balanceモード:標準のモード | 54W / 54W |
65W | Performanceモード:もっとも高性能だが騒音も大きい | 65W / 70W |
CPU性能
CPUとしては、Zen4世代のRyzen 9 8945HSが使われています。これは2023年12月にリリースされた、旧世代のハイエンドノートPC向けCPUです。
CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」では、当サイトがこれまで検証してきたミニPCのなかでもっとも優秀な結果が出ました。最新世代のCPUを搭載した10万円オーバーのミニPCよりは劣るかもしれませんが、10万円以内の機種のなかでは非常に優秀です。
ミニPCの性能比較
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) ※Performance |
1822
17188
|
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) ※Balance |
1821
16671
|
GMKtec NucBox K8 Plus(Ryzen 7 8845HS) |
1788
16176 |
ThinkCentre M75q Gen5(Ryzen 7 PRO 8700GE) |
1810
14957 |
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS) |
1781
14483 |
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) ※Quiet |
1814
14409
|
MINISFORUM MS-01(Core i9-12900H) |
1720
14156 |
GMKtec NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H) |
1558
13374 |
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H) |
1723
11651 |
GMKtec NucBox M6 (Ryzen 5 6600H) |
1504
10281 |
GMKtec NucBox M5 Plus(Ryzen 7 5825U) |
1364
6514 |
GMKtec NucBox G6(Ryzen 3 5425U) |
1334
4705 |
GMKtec NucBox G3(Intel N100) |
796
2865 |
NucBox G3 Plus(N150) |
793
2723 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
最新ノートPCとのCPU性能比較
ノートPCの最新機種やMac miniと比べるとシングルコア性能はほどほどではあるものの、マルチコアのスコアは悪くありません。むしろ最新ノートPCの価格が軒並み15万円以上であることを考えれば、10万円以下のNucBox K11は健闘していると言っていいでしょう。
最新PCの性能比較
CPU | CINEBENCH R24 Score |
---|---|
Yoga Pro 7 Gen 9(Ryzen AI 9 365) |
114
1069 |
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) ※Balance |
109
961
|
Mac Mini(2024)(M4) |
174
938 |
Yoga Slim 7x Gen 9(Snapdragon X Elite X1E-78-100) |
106
898 |
IdeaPad Slim 5 Gen 8(Core Ultra 7 155H) |
105
897 |
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H) |
103
675 |
Yoga 7 2-in-1 Gen9(Ryzen 7 8840HS) |
97
665 |
Yoga Slim 7i Aura Edition Gen9(Core Ultra 7 258V) |
119
585 |
HP OmniBook Ultra Flip 14-fh(Core Ultra 7 258V) |
120
545 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
デスクトップPCとのCPU性能比較
第13~14世代Core i5搭載の事務作業向けスタンダードノートPCと比べると、性能面ではNucBox K11のほうがだいぶ有利です。より上位のCore i7搭載モデルでならそちらのほうが高性能かもしれませんが、コスパの面ではNucBox K11のほうが勝っています。
デスクトップPC向けCPU性能比較
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) ※Balance |
1821
16671
|
IdeaCentre 5i Gen 8(Core i5-13400) |
1772
11826 |
Inspiron 3030S(Core i5-14400) |
1700
11873 |
Inspiron 3020(Core i5-13400) |
1762
13666 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon 780M(RDNA3)が使われます。ベンチマークテスト「3DMark Time Spy Graphics」スコアは「3036」で、10万円以下のミニPCとしてはかなり優秀な部類です。10万円以上のミニPCではより上位の内蔵グラフィックスが使われるため、それらに比べるとやや低めかもしれません。
ミニPCのグラフィックス性能
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 3050(ノートPC)平均値 |
4874
|
Arc Graphics(LunarLake)平均値 |
3767
|
GMKtec NucBox K11(Radeon 780M) |
3036
|
MINISFORUM UM773 Lite(Radeon 680M) |
2363
|
Minisforum MS-01(Iris Xe) |
1779
|
NucBox M6(Radeon 660M) |
1559
|
NucBox M5 Plus(Radeon Vega) |
1104
|
NucBox G2 Plus(N150,Intel Graphics) |
431
|
NucBox G3(N100, UHD) |
323
|
※スコアは当サイト計測値、平均値はUL Solutionsのデータを参考にしました
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Essentials (一般利用) |
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する |
Productivity (ビジネス利用) |
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する |
電力モードを変えてテストを行なったところ、どのモードでも各テストの目標値を大きく上回りました。ハイエンドクラスの機種とも大きな違いはなく、むしろ総合的には上回っています。ちょっと前のゲーミングノートPCと変わらないくらいで、普段使いや仕事には十分活用できるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10880
11063
10928
7119
9832
10783
10921
10849
10755 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
10403
10442
10425
4259
8842
9785
6840
7023
10805 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
9456
9962
10249
2406
4968
8695
7429
7978
8559 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶NucBox G3 | Intel N100 / 8GB / UHD |
---|---|
▶NucBox M5 Plus | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶UM773 Lite | Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M |
▶GEEKOM GT13 Pro | Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe |
▶MS-01 | Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe |
▶ThinkCentre M75q Gen5 | Ryzen 7 PRO 8700GE / 32GB / Radeon 780M |
クリエイティブ性能
「UL Procyon」は、世界的にも利用者が多く「デファクトスタンダード」とも言えるアドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測します。「PCMark 10」と比べて、より高度で実践的なテストを行なう点が特徴です。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Photo Editing | 「Photoshop」と「Lightroom Classic」を利用した、写真の加工・出力に関する総合評価 |
Video Editing | 「Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間からスコアが算出される |
検証機とそのほかのミニPCの結果は、以下のグラフのとおり。Photo EditingとVideo Editingのどちらもスコアが高く、ミニPCとしては最上位クラスの性能です。普通の写真加工やごく小規模の動画編集であれば、問題なく利用できるでしょう。
クリエイティブ性能の比較
CPU | UL Procyon |
---|---|
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) |
6401
9432
|
GMKtec NucBox K8 Plus(Ryzen 7 8845HS) |
6053
9484 |
ThinkCentre M75q Gen5(Ryzen 7 PRO 8700GE, Radeon 780M)) |
5952
8065 |
GMKtec NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H, Radeon 680M) |
4614
7941 |
MINISFORUM MS-01(Core i9-12900H, Iris Xe) |
5349
7755 |
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS, Radeon 780M) |
5772
7195 |
GMKtec NucBox M6(Ryzen 5 6600H, Radeon 660M) |
4751
6941 |
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H, Iris Xe) |
4631
5491 |
GMKtec NucBox M5 Plus(Ryzen 7 5825U, Radeon) |
3526
4321 |
※「Photo」はPhoto Editing、「Video」はVideo Editing。スコアは当サイトの実機計測結果
ゲーム性能について
ゲーム性能については、優秀と言えるほどではありません。しかし軽いゲームであれば、画質や解像度を落とすことで普通のレベル(平均 60 fpsオーバー)で楽しめるでしょう。
※テスト結果は電源モード「Balance」時のものです
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(やや軽い)
最高画質では厳しいものの、画質を下げれば平均90~100 fpsあたりで楽しめるはず。ゲーミングPCには及ばないものの、意外にもけっこう動くなというのが正直な感想です。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
だいたい105~130 fpsあたり。ターゲットが粗く表示されるのが気にならないなら十分楽しめる | 概ね55 fps前後。ゲームとしては普通に遊べそうだが、状況によってはカクつきを感じるかもしれない |
原神(軽い)
フルHDの最高画質でも60fpsをキープしています。ただし派手なエフェクトやオブジェクトが多いシーンではフレームレートが落ちるかもしれません。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
常時60 fpsあたりでカクつきは感じられない | ほぼ60 fpsあたりだが、たまに55 fpsあたりまで落ち込むことがある |
FF14ベンチ(やや重い)
フルHDの最低画質で「6421」の「やや快適」との評価ですが、平均44.87 fpsは画面のカクつきがけっこう目立ちます。快適に遊べる目安である平均60 fpsにはまだ足りません。
評価とフレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
6421(やや快適) 平均44.87 fps | 3898(設定変更を推奨) 平均27.14 fps |
SF6ベンチ(やや軽い)
フルHDの最低画質でも、平均60 fpsを下回る結果に。動きのカクつきはあまり目立たないものの、対戦中に違和感を感じることがあるかもしれません。
フレームレート
最低画質(内部解像度「5」) | 最高画質(内部解像度「5」) |
---|---|
FIGHTING GROUND:平均40.70 fps(問題なくプレイできます) | FIGHTING GROUND:平均28.96 fps(設定変更が必要です) |
マインクラフト 統合版(軽い)
標準のビデオ設定(チャンク32)で、常時60fpsをキープ。普通にプレー可能です。カクつきは感じられませんでした。しかし負荷の高い状況だと、重く感じるかもしれません。
フレームレート
標準画質 |
---|
プレー開始直後で平均60 fps前後。AFMF 2を有効にするとフレームレートが下がることがあるので、無効化したほうがいいかも |
サイバーパンク2077(超重い)
画質を落とせば、思いのほか普通に動きます。さすがにレイトレ(レイトレーシング)は厳しいですが、フレーム生成を有効にすればそこそこの画質でも楽しめるかもしれません。
フレームレート
フレーム生成 | 最低画質 | ウルトラ画質 | レイトレ最高画質 |
---|---|---|---|
無効 | 53.7 fps | 30.82 fps | 4.86 fps |
有効 | 88.08 fps | 53.66 fps | 10.06 fps |
モンスターハンターワイルズ ベンチマーク(超重い)
画質を落とせば、平均30 fpsで「問題なくプレイできます」との評価。ただし最低設定はストレスを感じるほど画質が悪いので、おすすめしません。快適にプレーできるかという点では、かなり厳しいでしょう。
フレームレート
フレーム生成 | 最低画質 | ウルトラ画質 |
---|---|---|
無効 | 10643(31.31 fps) | 5620(16.06 fps) |
有効 | 8483(49.40 fps) | 5150(27.85 fps) |
熱と騒音について
※計測時の室温は16度前後。室温が変わると、結果が異なる場合があります
標準時(54W)の熱と騒音
まず標準モードの「Balance」(54W)で見ると、CPU温度は最大で85.6度、平均では84.18度でした。なんとか許容範囲内だとは思いますが、安心できるほど温度が低いわけでもありません。とは言え、常用するならこの設定がおすすめです。

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移(電源モード「Balance」時)
各項目の平均値と最大値
コアクロック | 平均4313MHz | 最大4367MHz |
---|---|---|
CPU温度 | 平均84.18度 | 最大85.6度 |
CPU消費電力 | 平均53.64W | 最大54W |
騒音については、排気音やモーター音が少し大きく聞こえる場合があるものの、うるさく感じるほどではありませんでした。
駆動音の計測結果(Balance)
電源オフ時 | 36.9dB | - |
---|---|---|
待機中 | 37.5dB | 耳を近づけるとジリジリとした音やモーターの回転音がわずかに聞こえるが、うるさくはない |
Windows Update時 | 37.7~39dB | 甲高いモーター音がわずかに聞こえるが、1分程度なので気にならない |
軽作業時(PCMark 10) | 38~40.3dB前後 | ときおり大きめの排気音と低いモーター音が短時間聞こえるが、基本的には静か |
高負荷時(CINEBENCH) | 40.5dB前後 | 「サーッ」という排気音と甲高いモーター音がハッキリと聞こえる。うるさくはないが、静かな場所では気になるかも |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dBA前後 | - |
高出力時(65W)の熱と騒音
消費電力が高めに設定されている「Performance」モードでは、「Balance」に比べて平均クロックが5%程度アップしています。しかしCPU温度が平均89.9度と、やや大きく増えてしまいました。そのぶんベンチマークスコアも向上するので、性能を重視したい人向けです。

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移(電源モード「Performance」時)
各項目の平均値と最大値
コアクロック | 平均4536MHz | 最大4567MHz |
---|---|---|
CPU温度 | 平均89.9度 | 最大91.8度 |
CPU消費電力 | 平均64.8W | 最大65W |
消費電力が増えて熱が上昇したことで冷却用のファンが強く回るため、騒音も大きく聞こえます。特に高負荷時の音は、うるさく感じました。ただ本体を持ち上げると音がだいぶ減ったので、もしかすると机と共振していたのかもしれません。環境によっては、音の聞こえ方がだいぶ変わる可能性があります。
駆動音の計測結果(Performance)
電源オフ時 | 36.9dB | - |
---|---|---|
待機中 | 37.6dB | 耳を近づけるとジリジリとした音やモーターの回転音がわずかに聞こえるが、うるさくはない |
Windows Update時 | 42.6dB前後 | 排気音と低いモーター音がしっかりと聞こえる。短時間なので、あまり気にならない |
軽作業時(PCMark 10) | 38.5~42.6dB前後 | 甲高いモーター音と排気音がハッキリと聞こえる。ときどき音が大きく聞こえた |
高負荷時(CINEBENCH) | 47.1dB前後 | 排気音が大きく、モーターによる振動も大きい。ガマンできないほどではないが、それなりにうるさい |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dBA前後 | - |
静音時(35W)の熱と騒音
消費電力を抑えた「Quiet」モードではCPUの平均温度が61.5度と低く、「Balance」モードや「Performance」モードよりもだいぶ低く抑えられています。そのぶん動作音も小さくなる(後述)のですが、パフォーマンスもやや下がってしまうので注意してください。

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移(電源モード「Quiet」時)
各項目の平均値と最大値
コアクロック | 平均3778MHz | 最大3818MHz |
---|---|---|
CPU温度 | 平均61.5度 | 最大62.8度 |
CPU消費電力 | 平均34.8W | 最大35.0W |
騒音については、高負荷時でも大きく聞こえることはありません。しかし常時低音域の音がわずかに聞こえており、まったくの無音というわけでもありませんでした。とは言え、基本的には静かです。
駆動音の計測結果(Quiet)
電源オフ時 | 36.9dB | - |
---|---|---|
待機中 | 37.6dB | 耳を近づけるとジリジリとした音やモーターの回転音がわずかに聞こえるが、うるさくはない |
Windows Update時 | 39.1dB前後 | 低いモーター音が少し聞こえる。短時間なので気にならない |
軽作業時(PCMark 10) | 37.9dB前後 | 耳を近づけるとジリジリとした音やモーターの回転音がわずかに聞こえるが、うるさくはない |
高負荷時(CINEBENCH) | 38.3dB前後 | 同上 |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dBA前後 | - |
他機種との騒音比較
騒音(ファンの回転音や通気口からの排気音など)は高負荷時にはハッキリと聞こえるものの、よっぽどの設定でない限りうるさくは感じませんでした。ミニPC全体のなかで比べても、基本的には静かです。ただし常に高周波の振動のような音が響くため、その点は少し気になるかもしれません。置き方によって改善される可能性はあります。
ミニPCの騒音比較
CPU | 簡易騒音計による計測結果 |
---|---|
GEEKOM GT13 Pro |
37.6
53 |
GEEKOM AE7 |
39.3
52 |
GMKtec NucBox M5 Plus |
48
50.5 |
ThinkCentre M75q Gen5 ※Ryzen 7 |
49.7
49.6 |
MINISFORUM MS-01 |
40.1
49 |
GMKtec NucBox M6 |
43
47.7 |
GMKtec NucBox K11 ※Performance |
42.6
47.1
|
GMKtec NucBox K8 Plus |
41.3
41.9 |
MINISFORUM UM773 Lite |
41
41.9 |
GMKtec NucBox M7 |
40.3
41.3 |
GMKtec NucBox K11 ※Balance |
40.3
40.5
|
NiPoGi AK1PLUS N97 |
37.2
40.5 |
GMKtec NucBox G6 |
39.4
38.7 |
GMKtec NucBox K11 ※Quiet |
37.9
38.3
|
NucBox G2 Plus |
36.7
37.4 |
NucBox G3 Plus |
36.6
36.9 |
※「軽」は軽作業時、「高」は高負荷時。そのほかの機種の値は標準設定時、並び順は高負荷時で音が大きい順
K8 Plus / M7との違い
GMKtecからは、「NucBox K8 Plus」や「NucBox M7」といったハイエンド系のミニPCも発売されています。購入の際に、これらの違いが気になるかもしれません。それぞれで特徴はあるものの、基本的な機能としてはどれもほぼ同じ。コスパ重視なら「M7」、性能重視なら「K11」、バランス重視なら「K8 Plus」を選ぶといいでしょう。


スペックの違い
K11 | K8 Plus | M7 |
---|---|---|
Ryzen 9 8945HS(Zen4) | Ryzen 7 8845HS(Zen4) | Ryzen 7 PRO 6850H(Zen3+) |
DDR5-5600 32GB | DDR5-4800 16GB | |
1~2TB PCIe 4.0 SSD | 512GB PCIe 3.0 SSD | |
Radeon 780M(RDNA3) | Radeon 680M(RDNA2) | |
Oculink+USB4(PD/DP対応)×2 | ||
132×奥行き125×高さ58mm / 523g | 幅125.2×奥行き132.5×高さ58.8mm / 639g | 幅127×奥行き132×高さ58.4mm / 634g |
9万円台後半 | 8万円前後 | 4万円台後半 |
外観の違い

どれも見た目は似ていますが、M7は本体側面がグレーで、K11はファンがRGBイルミネーション付きである点が異なります

サイズについてもほぼ同じような印象

厚さもほとんど変わりません
性能の違い
CPU性能の違い
CPU性能は同じZen4世代であるRyzen 9 8945HSとRyzen 7 8845HSで、あまり大きな違いはありません。しかしZen3+世代であるRyzen 7 PRO 6850Hとは、ワンランクぶん相当の大きな違いがあります。
CPUの性能比較
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) ※Balance |
1821
16671
|
GMKtec NucBox K8 Plus(Ryzen 7 8845HS) |
1788
16176 |
GMKtec NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H) |
1558
13374 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
グラフィックス性能の違い
グラフィックス機能も、Zen4(RDNA3)世代では大きな差はありませんでした。しかしZen3+(RNDA2)とでは、だいぶ大きな違いがあります。特にゲームについては、体感的にだいぶ異なるでしょう。
グラフィックスの性能比較
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
GMKtec NucBox K8 Plus(Radeon 780M) |
3047
|
GMKtec NucBox K11(Radeon 780M) |
3036
|
NucBox M7(Radeon 680M) |
2358
|
※スコアは当サイト計測値、平均値はUL Solutionsのデータを参考にしました
PCを使った作業の快適さの違い
作業の快適さを計測するPCMark 10では、以下のような結果となりました。Zen4世代のRyzen 9とRyzen 7では普段使いや事務作業での大きな違いはないものの、コンテンツ制作の面でRyzen 9のほうが有利です。Zen3+世代では、やはり性能がワンランク劣ります。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
11063
11087
10414 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
10442
10566
8860 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
9962
9674
8977 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
クリエイティブ性能
アドビ製ソフトの快適さを計測する「UL Procyon」でも、似たような結果が出ています。ただK11のほうがSSDのアクセス速度がやや遅いため、その部分が多少ボトルネックになっているかもしれません。
クリエイティブ性能の比較
CPU | UL Procyon |
---|---|
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) |
6401
9432
|
GMKtec NucBox K8 Plus(Ryzen 7 8845HS) |
6053
9484 |
GMKtec NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H, Radeon 680M) |
4614
7941 |
※「Photo」はPhoto Editing、「Video」はVideo Editing。スコアは当サイトの実機計測結果
騒音の違い
簡易騒音計による計測では、K11がもっとも静かと出ています。しかし体感的にはその逆で、音は小さいけれども耳に残る音はK11が大きいように感じました。筆者の体感で言うなら、K11→K8 Plus→M7の順で音が気になります。
騒音の比較
CPU | 簡易騒音計による計測結果 |
---|---|
GMKtec NucBox K8 Plus |
41.3
41.9 |
GMKtec NucBox M7 |
40.3
41.3 |
GMKtec NucBox K11 ※Balance |
40.3
40.5
|
※「軽」は軽作業時、「高」は高負荷時。そのほかの機種の値は標準設定時、並び順は高負荷時で音が大きい順
考察とまとめ
優秀なコスパ
全体的に見て、コスパは非常に素晴らしいと思います。パソコン全体が値上がりしているなか、これだけの高い性能に加えてWindows 11 Proと32GBメモリー、そしてOculinkとUSB4×2を搭載し、しかも10万円以下のPCがあるでしょうか? ノートPCやデスクトップPCなら、普通は20万円クラスでしょう。性能と機能と価格の面だけで見れば(ブランドや安心感は考慮しないとして)、最強クラスの仕上がりだと思います。
多少の騒音は気にならない人向け
GMKtecのミニPCは熱対策がかなりしっかりしていて、騒音や発熱はあまり気になりません。特に最近のハイエンド系は、その傾向がより強化されているに感じます。
ただそんななかで、K11はちょっと騒音が気になりました。とは言え超高性能なRyzen 9を搭載しているのではあれば、まあ仕方がないことではあります。それでもミニPCとしては静かなほうなので、多少の騒音なら気にならない人に向いているでしょう。少しでも騒音を減らしたいなら、Ryzen 7搭載のK8 PlusやM7のほうがおすすめです。