2023年発売の『HP Pavilion Aero 13-be2000』(以下、”HP Pavilion Aero 13-be”)は、は、13.3インチディスプレイ搭載のモバイルノートPCです。重さが1kgを切る超軽量タイプでありながら、CPUは非常に高性能。その上、同クラス製品よりもリーズナブルな価格で入手できます。

13.3インチモバイルノートPC『HP Pavilion Aero 13-be2000』
発熱対策でCPU性能が抑えられているような印象はありますが、それでも性能は優秀です。発熱や騒音も、個人的には許容範囲内でした。キーボードの配列にややクセがありますが、総合的にはかなりコスパの高いモバイルノートPCです。10万円前後でノートPCを探している人にオススメ。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
発売日 | 2023年4月4日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 13.3インチ、1920×1200ドット、IPS、100% sRGB |
CPU | Ryzen 5 7535U / Ryzen 7 7735U |
メモリー | 8 / 16GB LPDDR5-6400 ※オンボード |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 660M(Ryzen 5) /680M(Ryzen 7)(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 |
インターフェース | USB Type-C(PD / DP)×1、USB Type-A ×2、HDMI2.1、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
生体認証 | 指紋認証 |
サイズ / 重量 | 幅298mm、奥行き209mm、高さ16.9~18.9mm / 約957g |
バッテリー | 3セル 最大12時間 |
本体デザイン

本体カラーはセラミックホワイトとピンクベージュの2種類

今回試用したのは、セラミックホワイトのモデル。清潔感のあるさわやかな白です

ボディは軽量でも強度が高いマグネシウム合金製。マグネシウム特有のざらついたドライな手触りはありませんが、塗装がやや厚いためマットな手触りです

設置面積は幅298mm×奥行き209mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。ほぼA4サイズ(幅297×奥行き210mm)と考えていいでしょう。13インチタイプとしてはコンパクトです

厚さは公称値で16.9~18.9mm。底面部のゴム足を除いた本体のみの高さは実測で16.9mmでした

底面部のゴム足を含めた設置時の高さは、実測で17.6mm

実際に手で持つと、とてもスリムに感じます

重さは公称値では約957gですが、実測では991gでした

公称値よりもやや重かったものの、実際に手で持つととても軽く感じます

ディスプレイを開いた状態

ホワイトのモデルは、キーボード面もホワイト。キーの色とキーボードベゼルの色がわずかに異なる上に影でキーの輪郭がはっきりと出ているので、個々のキーは比較的判別しやすく感じます

ディスプレイのベゼル(枠)は細めで、画面周りがスッキリとしています

カメラは720p 30fpsの動画撮影に対応。一般的なスペックですが、最近増えてきた1080pタイプよりも画質がワンランク落ちます

インターフェース構成。Type-CはUSB PDによる充電と映像出力に対応しています。CPU的にはUSB4に対応しているのですが、この機種では非対応です。

Type-Aはカバー付きですが、USB利用時は特にカバーを操作する必要もなく、普通に挿入できました

電源アダプターは65Wの丸口タイプ。重さは実測で317gです。以前のタイプよりも小型化していますが、サードパーティのUSB充電器と比べればまだまだ巨大

スピーカーは底面部に配置。低音域はややこもって聞こえるものの、動画やビデオ会議の音声はクリアーに聞こえます

キーボード右下に指紋センサー

排気口はこの位置

底面部には吸気口
ディスプレイについて

画面サイズは13.3インチで、解像度は1920×1200ドット

色域は100% sRGB。スマホやタブレットほどの鮮やかさはないものの、ノートPCとしては鮮やかな色合いです

明るさも十分で、作業時に暗く感じることはありませんでした
キーボードについて

キーボードはテンキーなしの日本語配列で、バックライトに対応しています

キーボードの左側

キーボード右側。Enterキーの右側に、特殊キーが縦に並んでいます。慣れないウチは打ち間違いがあるかもしれません

電源ボタンがEnterキー上の微妙な位置にありますが、長押ししないと反応しないため、打ち間違いで作業中にスリープへ移行することはありません

キーストロークは浅めですが、キーを押した瞬間のクリック感がやや固いので、手応えは感じられます。押下圧も高く、薄型ノートPCのなかでは比較的押し込むように打つキーボードです

クリック感が固いのもあって、タイプ音はカタカタとやや大きめ。軽い力で入力すればうるさくはありませんが、静かな場所では周囲に配慮したほうがいいでしょう
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 7735U(Zen3+、8コア、28W) |
---|---|
メモリー | 16GB LPDDR5-6400 |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 680M(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」電源モードを「最適なパフォーマンス」または「バランス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、Zen3+世代のRyzen 5 7535UまたはRyzen 7 7735Uが使われています。旧世代のRyzen 5 6600U / Ryzen 7 6800Uのリフレッシュ版的なイメージです。
CPUベンチマークではマルチスレッド(マルチコア)のテストで、非常に優れたスコアが出ています。ただWindows 11の電源モードを変えて同じテストを行なったところ、高いパフォーマンスを設定できるはずの「最適なパフォーマンス」ではスコアが伸び悩みました。標準的な「バランス」設定と変わらないのであれば、パフォーマンスを調整する必要はないかもしれません。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Pavilion Aero 13(Ryzen 7 7735U) ※バランス |
22475
|
Pavilion Aero 13(Ryzen 7 7735U) ※最適なパフォーマンス |
22432
|
Ryzen 7 7735U |
21043
|
Core i5-1340P |
20760
|
Core i7-1360P |
19623
|
Ryzen 7 7730U |
18979
|
Core i5-1335U |
18240
|
Ryzen 5 7535U |
17163
|
Ryzen 5 7530U |
16196
|
Core i7-1355U |
15636
|
Core i3-1315U |
13033
|
Ryzen 3 7330U |
10909
|
Core i3-N305 |
10265
|
Ryzen 5 7520U |
9759
|
Ryzen 3 7320U |
9249
|
Intel N100 |
5638
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
軽めの作業に強く影響するシングルスレッド(シングルコア)のテストでは、第13世代Coreプロセッサのほうが高いスコアが出ています。またこちらもパフォーマンス設定を変更してテストを行なったところ、「最適なパフォーマンス」のほうが若干高い結果となりました。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-1360P |
3670
|
Core i5-1335U |
3665
|
Core i7-1355U |
3606
|
Core i3-1315U |
3573
|
Pavilion Aero 13(Ryzen 7 7735U) ※最適なパフォーマンス |
3524
|
Pavilion Aero 13(Ryzen 7 7735U) ※バランス |
3507
|
Ryzen 7 7735U |
3289
|
Ryzen 7 7730U |
3228
|
Ryzen 5 7530U |
3136
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3089
|
Ryzen 5 7520U |
2573
|
Ryzen 3 7320U |
2485
|
Core i3-N305 |
2279
|
Intel N100 |
1971
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
総合的な負荷の高いマルチスレッドのテストでスコアが下がるのは、CPUの発熱が影響している可能性があります。熱で性能が低下しているか、もしくはあえてパフォーマンスが伸びないよう調整されているのかもしれません。
とは言え、薄型ノートPC向けCPUとしては現時点では最高クラスの性能です。重い処理でも快適にこなせるでしょう。
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon 660M(Ryzen 5モデル)またはRadeon 680M(Ryzen 7モデル)が使われます。3Dベンチマークテストの結果は内蔵グラフィックスとしては優秀ではあるものの、同じグラフィックス機能の平均値をやや下回りました。ごく軽めのゲームや小規模クラスのクリエイターワークには、ある程度の効果は見込めそうです。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(Zen3+) |
2211
|
Pavilion Aero 13(Radeon 680M、Zen3+) |
1901
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) |
1302
|
Radeon (Zen3) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Zen2+) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は大きく上回っており、一般的な使い方であれば快適に利用できるでしょう。ただしCPUに高い負荷のかかるマルチコア系の処理では、少し伸び悩んでいるようにも見受けられます。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9663
10616
10917
9869
10258
10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
9178
10003
9572
8854
7417
7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
7509
6018
6536
8298
6026
6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は最大12時間とされています。しかしこれはバッテリーの消費量を極力抑えた状態の結果であって、実際の利用に即した結果ではありません。
そこでPCMark10のバッテリーベンチマーク機能を使い、ビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から7時間51分でバッテリー残量が3%に達し休止状態へ移行しました。最近の機種としてはあまり長いほうではありませんが、まあ妥協できる範囲内ではあるでしょう。
ただしテスト機のディスプレイ解像度が2560×1600ドット(国内未発売仕様)の試作機であったため、バッテリー駆動時間が通常よりも短くなっている可能性があります(解像度が高いほどバッテリー消費量が大きい)。またディスプレイの輝度やパフォーマンス設定を下げれば、駆動時間が延びるかもしれません。
PCMark 10バッテリーテスト検証結果(Ryzen 7モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | ※非公開 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 7時間51分 |
充電率50%までの時間 | - | 58分 |
満充電になるまでの時間 | - | 2時間35分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
熱と騒音について
今回試用したRyzen 7モデルでは、高負荷時にキーボード上部がほんのり温かくなるのを感じました。不快になるほどではなく、個人的には特に気になりません。

高負荷時にキーボード上部あたりがほんのり温かくなりますが、熱く感じるほどではありませんでした ※個体差があります
高負荷時におけるCPUの温度を計測したところ、平均では70度前半を推移していました。Windows 11の電源モードを変えた場合でも、大きな変化はありません。むしろパワーが低いはずの「バランス」で高いクロックが出ており、「最適なパフォーマンス」よりも優れた性能を出せる可能性があります。
センサーのログを確認したところ、サーマルスロットリング(熱による性能低下)は発生していませんでした。おそらく熱が上がりすぎないように、システム側でチューニングされているのかもしれません。

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPUクロックとCPU温度の推移
高負荷時の駆動音(排気音やファンの回転音)はハッキリと聞こえるものの、うるさくはありませんでした。ただ無音ではないので、多少の音が聞こえるのは認識しておいたほうがいいと思います。
駆動音の計測結果
電源オフ | 36.5dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 36.5dBA前後 | ほぼ無音 |
高負荷時(バランス) | 40.5dBA前後 | 排気音がハッキリと聞こえる。うるさくはないが、静かな場所では音がそれなりに気になる |
高負荷時(最適なパフォーマンス) | 40.5dBA前後 | 同上 |
超軽量モバイルノートPCとしては非常に高コスパ
薄型ノートPCとしては最高クラスのパフォーマンスで、なおかつ1kgを切る超軽量タイプ。純粋にスペック面だけで見れば、最強クラスのモバイルノートPCと言っていいでしょう。
さらにスゴイのは、値段がそれほど高くはない点です。1kgを切る超軽量タイプは値段が非常に高く、Core i5+8GBメモリーの組み合わせでも10万円、15万円を超えることは珍しくありません。しかしHP Pavilion Aero 13-beならセール時でRyzen 5+16GBメモリーモデルが9万円前後、Ryzen 7+16GBメモリーモデルで11万円前後で販売されることがあります。楽天のポイント還元を含めれば、さらにお得に入手できることもあるでしょう。

セール時には驚くほどお得に入手できることがあります
ただしキーボードの配列や、ボディがやや華奢に感じる点に不満があるかもしれません。頑丈には作られているものの、ほかの高級ノートPCに比べると、わずかに頼りなさを感じるのはあると思います。
しかしコスパの面で見れば、非常に優秀です。耐久性についても基本的には問題ないものの、余った予算で有料保証を追加する手もあります。高性能な超軽量ノートPCを検討している人は、ぜひチェックしてみてください。
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