ASUSの「Vivobook Pro 15 OLED M3500QA」は、15.6インチでフルHDの有機EL(OLED)ディスプレイを搭載するノートPCです。ディスプレイの映像品質は一般的なIPSパネルよりもコントラストが高く、とても色鮮やか。美しい画面で映像を楽しみたい人に向いています。

色鮮やかな有機ELディスプレイを搭載するVivobook Pro 15 OLED M3500QA
発売は2021年11月で、通常価格は13万円前後から。CPUはZen3世代のRyzen 9 5900HXまたはRyzen 7 5800Hで、メモリー容量は8 / 16GB。専用グラフィックス(dGPUあるいはグラボ)は搭載されていません。

GPU(グラボ)は非搭載で、大作ゲームや高度な動画編集には不向き
今回試用したのは、最安のRyzen 7 5800H + 8GBメモリーモデル。2022年8月時点では、セールによって8~9万円前後で販売されていることもあります。高性能なRyzen 7 5800H搭載でコスパ的には悪くないのですが、メモリー容量が8GBである点がネックです。正直なところ、8GBではせっかくの高性能CPUを活かしきれない気がします。
「でも自分でメモリーを増設できるんでしょ?」――そう思いながら本体内部を確認したところ、予想に反してメモリーは増設不可のオンボードでした。

Vivobook Pro 15 OLED M3500QAの本体内部。メモリースロットがないため、増設はできません ※今回は特別な許可を得て貸出機の内部を確認しています。ASUS製品ではユーザーによるパーツの増設や交換をサポートしていません
Ryzen 9 5900HXやRyzen 7 5800Hは非常に高性能なCPUですが、メモリーが8GBだとデータ量の大きい処理には向きません。普段使いや文書中心のビジネス作業、学習など一般的な作業向きです。ガッツリ作業したい場合は、16GBメモリー搭載モデルを選んでください。
ポイント
- 😄 有機ELによる美しい映像
- 😄 高性能なZen3世代Ryzen 7
- 🙄 メモリースロット非対応
- 🙄 解像度がフルHDのみ
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。なお試用したのはサンプル機のため、一部部材が量産品と異なる場合がある点にご注意ください。
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 15.6インチ 1920×1080 OLED 光沢 タッチ非対応 |
CPU | Ryzen 9 5900HX / Ryzen 7 5800H |
メモリー | 8~16GB DDR4-3200 ※オンボード |
ストレージ | 512GB / 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
通信 | 11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | USB3.2 Gen1 Type-C(データ通信のみ)×1、USB3.2 Gen1×1、USB2.0×2、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅359.8mm、奥行き235.3mm、高さ20.4mm / 約1.65kg |
バッテリー | 約14.7時間 |
本体デザイン

Vivobook Pro 15 OLED M3500QAの外観

本体カラーはクワイエットブルーとのことですが、実際にはブルーと言うよりもメタリックなダークグレーに見えます

天板はアルミ製。右側にはブランドロゴが配置されています。天板上部の線は、無線の電波感度を向上させるためのアンテナライン

キーボード面もアルミ製で、天板と同じ仕上がり

キーボードはバックライト対応

ベゼルは上部がやや太いものの、左右は細めに作られています。下部も細く、全体的に画面周りがスッキリとした印象です

インターフェース類は多くはありませんが、十分な構成です。ただしUSB Type-Cがデータ通信のみで、映像出力やPD給電に対応していない点は残念

電源アダプターは90Wの丸口タイプ。重さは324gと、スタンダードノートPC向けとしてはやや大きめです

スピーカーは底面配置。音の解像感は比較的高いものの、低音域はやや弱い上に中音域がややこもって聞こえます。ノートPC向けのスピーカーとしては標準よりやや上の印象です

ディスプレイ上部のWebカメラはプライバシーシャッター付き。生体認証には対応していません

排気口はこの部分。廃棄は一度ヒンジに当たるので、温風がディスプレイに直接当たることはありません

本体内部の冷却機構。GPU非搭載ですが2基のファンと排熱フィンで、内部はしっかり冷却されています

底面部は樹脂製。吸気はここの通気口から行なわれます
サイズと重量

本体サイズは幅359.8mm、奥行き253.3mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。B4サイズよりもひと回り小さい程度で、15.6インチタイプとしてはコンパクトです

厚さは実測で20.3mm(突起部含まず)

本体背面。底面部のゴム足(突起部)を含めた設置時の高さは22.4mm。ノートPCとしては一般的な厚さですが、高性能CPU搭載機としては薄く感じます

重さは実測で1.647kg。最近は15.6インチでもこの程度の重さの機種はちょくちょく見かけますが、高性能なRyzen 7 5800H搭載では珍しいかもしれません
ディスプレイについて

ディスプレイの大きさは15.6インチで、解像度は1920×1080ドット。スタンダードノートPCとしては、一般的なスペックです

ディスプレイには発色に優れるOLEDパネルが使われています。全体的に色が濃くて非常に鮮やか。特に黒はIPSパネルのようなグレーっぽさがなく、とても引き締まって見えます

ディスプレイ表面は光沢ありのグレア仕上げ。コントラストが高く色鮮やかですが、映り込みが生じる点に注意

色域はDCI-P3 100%と非常に広く、その上PATONE認証を取得済み。クリエイティブワークにも適したディスプレイです。写真や動画の加工には、16GBメモリー搭載モデルをおすすめします

ちょっと残念なのは、解像度が一般的なフルHDである点。2K以上の高精細なパネルであれば、映像はより美しく映し出されたでしょう。とは言えフルHDだからこそ、本体の値段が比較的安いとも考えられます
キーボードについて

キーボードはテンキー対応の日本語配列

テンキーは一般的な4列構成ではなく、ややクセのある3列構成

Enterキー周辺で一部のキーが隣接しています

キーピッチは実測18.6mmで、標準値の19mmよりもやや狭め。キーストロークは実測で平均1.34mm。おそらく1.3~1.4mmあたりを想定していると思われます。ストロークはやや浅いもののクリック感は固く押下圧が高いため、カクッとした手応えが感じられました

タイプ感がやや固いこともあって、タイプ音はカタカタとハッキリ聞こえます。うるさく感じるほどではありませんが、静かな場所では周囲に配慮したほうがいいでしょう。強く叩くとパチパチと響くので、軽めのタッチ推奨です
メモリーの増設について

前述のとおりVivobook Pro 15 OLED M3500QAはメモリースロット非搭載で、メモリーの増設には対応していません。ガッツリ使いたい人には、16GBメモリーモデルをおすすめします

オンボード(マザーボード直付け)の8GBメモリー。システム的には4GB×2のデュアルチャネルで動作しています

SSDはType-2280

Wi-Fiカード用のM.2スロット
※ASUSでは、ユーザー自身によるパーツの増設 / 交換はサポートしていません。自分でPCを改造すると、メーカー保証のサポート外となるので注意してください
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 5800H |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「MyASUS」の「ファンモード」をもっとも高性能な「パフォーマンスモード」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、AMD Zen3世代でゲーミングノートPC向けのRyzen 9 5900HXまたはRyzen 7 5800Hが使われています。Ryzen 7 5800H搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、同じCPUの平均スコアをやや下回る結果が出ました。ゲーミングノートPC向けCPUのなかでは、中位グループあたりの性能です。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
21119
|
Core i7-12700H |
15066
|
Ryzen 7 6800HS |
13898
|
Ryzen 9 5900HX |
12654
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Core i7-11800H |
11123
|
Vivobook Pro 15 OLED(Ryzen 7 5800H) |
10999
|
Ryzen 5 5600H |
8901
|
Core i5-11400H |
7529
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
しかし一般的な薄型ノートPC向けCPUよりも、はるかに高性能です。ベンチマークスコアは最新CPUよりも優秀で、高いパフォーマンスが要求される処理でも快適にこなせるでしょう。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-1280P |
12396
|
Vivobook Pro 15 OLED(Ryzen 7 5800H) |
10999
|
Ryzen 7 6800U |
9214
|
Ryzen 7 5800U |
9195
|
Core i7-1260P |
8447
|
Ryzen 5 5600U |
8411
|
Ryzen 7 5700U |
8304
|
Ryzen 5 5500U |
6779
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon Graphicsが使われます。3Dベンチマークテストの結果はRadeon Graphicsとしては優秀。おそらく高いCPU性能が影響しているのでしょう。ただしそれでも大作ゲームや高度な動画編集を行なうほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2014
|
MX450 |
1996
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Vivobook Pro 15 OLED(Ryzen 7) |
1238
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD |
407
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
ベンチマークテストの結果は非常に優秀です。特にワープロや表計算の快適さを表わすビジネス利用のテストでは、群を抜いています。ただしメモリー容量が8GBでは大規模なデータ処理には向かないため、16GBメモリーのモデルを選んだ方がいいでしょう。
コンテンツ制作のテストでも、なかなか健闘しています。グラフィックス性能に依存しない小規模な作品作りなら、一般的な薄型ノートPCよりも快適にこなせるはずです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10332
9477
8362
9667
9418
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
9813
6534
8253
8530
7927
8766 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
6794
5363
6187
8109
8486
10284 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Surface Studio | Core i7-11370H / 16GB / RTX 3050 Ti |
▶Inspiron 16 Plus | Core i7-11800 / 16GB / RTX 3050 |
▶raytrek R5-CA | Core i7-10875H / 16GB / RTX 3060 |
▶GALLERIA UL7C-R37 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3070 |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は約14.7時間とされています。ただし公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこでRyzen 7モデルを使ってビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から12時間18分で休止状態へ移行しました。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。ただしバッテリー駆動時はパフォーマンスが大きく下がる可能性がある点に注意してください。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Ryzen 7モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約14.7時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 12時間18分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 41分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間28分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
ゲーム性能
ゲーム系ベンチマークを試したところ、ごくごく軽いドラクエ10ベンチなら快適との評価が出ました。同程度のタイトルとしては競技系のヴァロラントや、UWPアプリの小規模タイトルなどが挙げられます。中規模クラス以上のタイトルは、画質や解像度を下げてもかなり厳しいかもしれません。基本的にゲームを楽しむための機種ではないと考えてください。
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 3179 / 21.7 FPS |
高品質 | 4195 / 28.8 FPS |
標準品質 | 5263 / 36.5 FPS |
※1920×1080ドットの結果
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)

画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 11629 / とても快適 |
標準品質 | 16336 / すごく快適 |
低品質 | 17406 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
色鮮やかでハイパフォーマンスなスタンダードノートPC
GPU非搭載のVivobook Pro 15 OLED M3500QAはゲーム用ではなく、一般用途あるいは軽めの写真加工やイラスト制作などに向いています。高性能なCPUを搭載しながらも本体がスリムで、しかも軽量。そしてなにより、広い色域のOLEDディスプレイを搭載している点が魅力です。
残念なのは、メモリースロットに対応していない点です。ガッツリ作業するつもりなら、16GBメモリー搭載モデルを選んでください。8GBメモリーモデルは、あくまでも一般的な作業向けです。
また解像度がフルHDにしか対応していない点も気になります。フルHDでも映像は十分美しいのですが、2K以上であればさらにワンランク上の映像品質を実現できたはず。とは言え、解像度が高くなればそのぶん値段もアップするでしょう。お手ごろ価格で入手できるOLEDノートPCと考えればアリです。
*
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