
※機材貸し出し:レノボ・ジャパン合同会社
レノボのIdeaPad Slim 5i Gen 8は、14インチ1920×1200ドットディスプレイを搭載するスタンダードタイプのノートPCです。大きさや薄さは普通のノートPCと変わりませんが、非常に高性能なCPUを採用することで、高いパフォーマンスを実現しています。

IdeaPad Slim 5i Gen 8
記事執筆時の価格
| スペック | 価格 | 
|---|---|
| Core i5-12450H / 16GB / IPS | 8万4810円 | 
| Core i5-13500H / 16GB / OLED | 9万4820円 | 
| Core i7-13620H / 16GB / IPS | 10万9725円 | 
※2023年11月9日時点
すでに同機種のCore i5-12450H / IPSモデルをレビューを公開していますが、今回新たにCore i5-13500H / OLEDモデルを借りたので再度検証を行ないました。以前のモデルとは大きく異なるディスプレイの品質とベンチマーク周りについてまとめています。外観部分については、以前のレビューをご確認ください。

※旧記事
OLEDパネルの映像は、非常に鮮やかです。写真や動画を楽しむのにも向いています。ただゲーミングノートPC用のCPUが使われているので性能は高いはずですが、総合性能を計測するベンチマークテストではスコアが思ったほど伸びませんでした。また高負荷の状態が長時間続くと、駆動音が大きく聞こえます。
ポイント
- ✅発色に優れるOLEDパネル
 - ✅総合性能はほどほど
 - ✅HDRはコンテンツによる
 - ✅光沢ありのグレアタイプ
 - ✅駆動音が大きい
 
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
| 発売日 | 2023年2月 | 
|---|---|
| OS | Windows 11 Home | 
| ディスプレイ | 14インチ 1920×1200ドット | 
| パネル | IPS(45% NTSC、300nit、非光沢 ) / OLED(100% DCI-P3、400nit、HDR500、光沢) | 
| CPU | Core i5-1340P / Core i7-1360P / Core i5-12450H / Core i5-13500H / Core i7-13620H | 
| メモリー | 16GB LPDDR5-4800 ※オンボード増設不可 | 
| ストレージ | 512GB / 1TB NVMe SSD | 
| グラフィックス | Iris Xe Graphics ※CPU内蔵 | 
| 通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 | 
| インターフェース | USB3.2 Gen1 Type-C(映像出力 / USB PD対応)×2、USB3.2 Gen1×2、HDMI1.4b、microSDメモリーカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 | 
| セキュリティ | ※生体認証なし | 
| サイズ / 重量 | 幅312mm、奥行き221mm、高さ17.9mm / 約1.46kg | 
| バッテリー | 約14~15時間 | 
ディスプレイについて
IPSパネルとOLEDパネルの違い
ノートPCでよく使われている「IPSパネル」と、最近の高級タイプのノートPCで使われ始めた「OLEDパネル」では、映像の色が大きく異なります。IPSパネルでも違和感はありませんが、OLEDパネルと見比べると色がくすんでいるように感じるでしょう。

IPSモデルのデスクトップ画面

OLEDモデルのデスクトップ画面。撮影環境が微妙に異なるので比較に適した状態ではないのですが、OLEDモデルのほうが色が鮮やかでグラデーションの階調表現が豊かに現われています
OLEDパネルの映像は、最近のスマホやタブレットに近い色合いです。色域はDCI-P3 100%。それに対してIdeaPad Slim 5i Gen 8のIPSパネルは45% NTSCで、品質はかなり低め。格安ノートPCで使われているものと変わりません。

IPSパネルの映像。色に違和感はありませんが、品質的には格安クラスです

OLEDパネルの映像。IPSパネルでは出にくい「赤」がとても鮮やかに映し出されています。全体的に色が濃く、人によっては派手に感じるかもしれません
HDRについて
IdeaPad Slim 5i Gen 8のOLEDモデルでは、HDR表示対応しています。HDRは対応コンテンツの色がより明るく鮮やかに、明暗差の階調表現がより豊かに映し出される点が特徴です。
ただしIdeaPad Slim 5i Gen 8のOLEDモデルでHDR映像を確認したところ、HDRの効果が現われるコンテンツと、逆にくすんだように映し出されるコンテンツとがありました。このあたりはHDRが正規認証ではない点が関係しているのかもしれません。あまり期待をしないほうがいいでしょう。

HDRに対応しているものの、正規認証ではありません ※下線は筆者

HDRの効果が良く現われている動画

HDRをオフにした状態

HDRでくすんでしまった画像の例

HDRをオフにした状態
色と明るさについて
OLEDパネルはバックライトが不要のため省電力性が高く、かつ「黒」がハッキリと映し出されると言われます。確かに黒主体の映像を確認すると、IPSパネルのような光の漏れが感じられませんでした。

バックライトを必要としないOLEDパネルでは、余計な光が漏れることがありません

「黒」がより「黒」らしく映し出されます
明るさは公称値で400nit。非常に明るいパネルです。白主体の画面では、若干まぶしく感じるかもしれません。文字中心の作業で使うなら、明るさを抑えたほうがいいでしょう。

明るさは400nit。非常に明るく、照明の下でも画面が暗く感じることはありません
なおOLEDモデルは、ディスプレイの表面が光沢ありのグレア仕上げです。照明や背景の写りこみが生じるので、注意してください。

光沢パネルは、背景や照明が映り込む場合があります。気になる場合は、ディスプレイの向きや角度を調整してください
ベンチマーク結果
試用機のスペック
| CPU | Core i5-13500H | 
|---|---|
| メモリー | 16GB | 
| ストレージ | 512GB NVMe SSD | 
| グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) | 
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
標準収録の設定ユーティリティ『Lenovo Vantage』を使えば、パフォーマンスの調整が可能です。今回のテストでは各ベンチマークテストを、以下のモードで実施しています。
ベンチマーク時の設定
| 記事中の表記 | スマート・パワー設定 | 概要 | 
|---|---|---|
| 最大 | エクストリーム・パフォーマンス | 最大出力設定 | 
| 標準 | インテリジェント・クーリング | 標準設定 | 

標準収録の設定ユーティリティ『Lenovo Vantage』の「デバイス設定」→「電源およびパフォーマンス」でパフォーマンスを調整できます
また今回は、以前に計測したCore i7-1360Pモデルの結果もまとめています

CPU性能
CPUとしては Core i5-1340P(12コア、PBP28W) / Core i7-1360P(12コア、PBP28W)、Core i5-12450H(8コア、PBP45W) / Core i5-13500H(12コア、PBP45W) / Core i7-13620H(10コア、PBP45W)の4種類が使われています。末尾に「H」が付くタイプはゲーミングノートPC向けで、スリム型ノートPCよりも高性能です。
Core i5-13500H搭載の検証機でCPUベンチマークテストを行なったところ、同じCPUの平均値を大きく上回る結果が出ました。一般用途向けのノートPCとしては、非常に優秀な結果です。ただレノボの製品はCPUベンチマークテストでは非常に高いスコアが出るものの、総合的なベンチマークテストではそれほどでもない場合があるので、過度に期待はしないほうがいいでしょう。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
| CPU | PassMark CPU Mark Score | 
|---|---|
| Core i7-13620H | 
 26484 
 | 
| 検証機(Core i5-13500H,最大) | 
 25119 
 | 
| 検証機(Core i5-13500H,標準) | 
 24389 
 | 
| Core i5-13500H | 
 23051 
 | 
| 検証機(Core i7-1360P,最大) | 
 22542 
 | 
| Ryzen 7 7735U | 
 21043 
 | 
| Core i5-1340P | 
 20760 
 | 
| Core i7-1360P | 
 19623 
 | 
| Ryzen 7 7730U | 
 18979 
 | 
| Core i5-1335U | 
 18240 
 | 
| Core i5-12450H | 
 17794 
 | 
| Ryzen 5 7535U | 
 17163 
 | 
| Ryzen 5 7530U | 
 16196 
 | 
| Core i7-1355U | 
 15636 
 | 
| Core i3-1315U | 
 13033 
 | 
| Ryzen 3 7330U | 
 10909 
 | 
| Core i3-N305 | 
 10265 
 | 
| Ryzen 5 7520U | 
 9759 
 | 
| Ryzen 3 7320U | 
 9249 
 | 
| Intel N100 | 
 5620 
 | 
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (シングルスレッド)
| CPU | PassMark CPU Mark Score | 
|---|---|
| 検証機(Core i7-1360P,最大) | 
 3994 
 | 
| Core i7-13620H | 
 3739 
 | 
| Core i7-1360P | 
 3670 
 | 
| Core i5-1335U | 
 3665 
 | 
| 検証機(Core i5-13500H,最大) | 
 3635 
 | 
| 検証機(Core i5-13500H,標準) | 
 3635 
 | 
| Core i7-1355U | 
 3606 
 | 
| Core i3-1315U | 
 3573 
 | 
| Core i5-13500H | 
 3543 
 | 
| Core i5-12450H | 
 3473 
 | 
| Ryzen 7 7735U | 
 3289 
 | 
| Ryzen 7 7730U | 
 3228 
 | 
| Ryzen 5 7530U | 
 3136 
 | 
| Ryzen 5 7535U | 
 3105 
 | 
| Ryzen 3 7330U | 
 3089 
 | 
| Ryzen 5 7520U | 
 2573 
 | 
| Ryzen 3 7320U | 
 2485 
 | 
| Core i3-N305 | 
 2279 
 | 
| Intel N100 | 
 1971 
 | 
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のIris Xe Graphicsが使われます。Core i5-13500H搭載の試用機で3Dベンチマークを行なったところ、組み合わせとしては妥当な結果が出ました。ゲームやグラフィックスソフトで多少の効果が見込めますが、大作ゲームや高度な動画編集を行なえるほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
| GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア | 
|---|---|
| GTX 1650 | 
 3241 
 | 
| Radeon 680M | 
 2211 
 | 
| IdeaPad Slim 5i(Iris Xe, Core i7+LPDDR) | 
 1752 
 | 
| Iris Xe(Core i7+LPDDR) | 
 1528 
 | 
| IdeaPad Slim 5i(Iris Xe, Core i5+LPDDR) | 
 1527 
 | 
| Iris Xe(Core i5+LPDDR) | 
 1302 
 | 
| Radeon | 
 1204 
 | 
| Iris Xe(Core i7+DDR) | 
 1149 
 | 
| Iris Xe(Core i5+DDR) | 
 977 
 | 
| UHD(Core i3) | 
 900 
 | 
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
すべてのテストで目標値を大きく超えており、全体としてはなかなか優秀です。ただし負荷の高いマルチコア性能が要求されるビジネス利用(高度なワープロや高度な表計算)では、スコアがやや落ちています。これは、CPUの熱が影響する機種でよく見られる現象。熱の影響が出ているのかもしれません。CPUベンチマークテストは非常に優秀だったのですが、総合力のテストでは月並みな結果です。
PCMark 10ベンチマーク結果
| テスト | スコア | 
|---|---|
| Essentials (一般的な利用) 目標値:4100  | 
 10373 
10234 
10454 
10616 
9882 
10917 
10258 
10501 
 | 
| Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500  | 
 6984 
7381 
7669 
10003 
6966 
9572 
7417 
7622 
 | 
| Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450  | 
 6792 
6753 
7061 
6018 
5500 
6536 
6026 
6624 
 | 
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
| ▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon | 
|---|---|
| ▶Vostro 15 3550 | Core i5-1335U / 16GB / Iris Xe | 
| ▶IdeaPad Flex 5 Gen 8 | Ryzen 7 7730U / 16GB / Radeon | 
| ▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe | 
| ▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe | 
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で約14~15時間とされています。しかしこれはバッテリー消費量をかなり抑えた状態での結果。実際の利用とは、結果が大きくかけ離れている場合があります。
そこで標準収録ソフト「Lenovo Vantage」の電源設定を標準である「インテリジェント・クーリング」に変更してビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、Core i5-13500Hモデルは開始から8時間13分で、Core i7-1360Pモデルは開始から5時間14分で休止状態へ移行しました。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
最近の薄型ノートPCとしては、かなり短い結果です。持ち歩きよりも据え置き利用、あるいは電源アダプターと合わせた持ち歩きに向いています。このあたりは高性能なCPUを搭載していることを考えればやむを得ないでしょう。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i5-13500Hモデル)
| テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 | 
|---|---|---|
| ※公称値 | 小 | 約14~15時間 | 
| Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 8時間13分 | 
| 50%充電までにかかった時間 | - | 31分 | 
| フル充電までにかかった時間 | - | 50分 | 
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i7-1360Pモデル)
| テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 | 
|---|---|---|
| ※公称値 | 小 | 約14~15時間 | 
| Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 5時間14分 | 
| 50%充電までにかかった時間 | - | 31分 | 
| フル充電までにかかった時間 | - | 1時間37分 | 
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
熱と騒音について
※室温24度の環境で計測しています。室温の異なる環境では違う結果が出る場合があるので、あらかじめご了承ください
CPU温度
高負荷時のCPU温度を計測したところ、標準設定では平均84.5度、最大設定では平均温度が90.6度でした。CPUベンチマークテストでは高いパフォーマンスが出ているものの、高温状態が常時続くことを考えると、熱による影響が心配です。PC本体をいたわりながら使うのであれば基本的には標準設定、多少パフォーマンスが落ちてもいいなら静音設定で利用するといいでしょう。

標準設定でCINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移

最大設定でCINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移
駆動音
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)はちょっと大きく聞こえます。ただし普段の作業で長時間音が大きく聞こえる場面はあまりありません。重いソフトをいくつも同時に使うと、音は大きく聞こえるようです。
駆動音の計測結果(Core i5-13500Hモデル)
| 電源オフ | 36.3dB | - | 
|---|---|---|
| 軽作業中 | 36.6~41.6dB | 通常時はほぼ無音。耳を近づければファンが回っているのはわかる程度。起動直後やちょっとした作業の際に、ファンの音が短時間大きく聞こえる | 
| 高負荷時 ※標準  | 
42.2dB前後 | 排気音が少し大きい。扇風機を強く回しているような音。個人的にはうるさくはないが、静かな場所では気になるかも | 
| 高負荷時 ※最大  | 
43.6dB前後 | 排気音が標準設定時よりも少し大きい。ヘッドホンをしていてもうっすらと聞こえる | 
| (参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - | 
ほどほどに高コスパ

OLEDパネルは、さすがの映像品質です。IPSパネルでも十分ではあるものの、OLEDパネルの映像を見るとIPSパネルはかなり残念な品質に感じてしまいます。ただ解像度が1920×1200ドットなので、映像の精細さはほどほど。高精細OLEDパネルは画質が2~3ランク上でそれこそ息をのむほどの美しさなのですが、IdeaPad Slim 5i Gen 8のOLEDモデルは単に発色のいいディスプレイにとどまっています。

解像度が高くない点が残念ですが、だからこその安さなのかもしれません
またベンチマークの解説部分でも触れましたが、CPUベンチマークの結果は妙にいいのに、総合的なテストではほどほどなのが残念です。もしかすると、CPUの発熱による影響が出ているのかもしれません。
とは言え同程度のパフォーマンスでOLEDを搭載したモデルであれば、普通は10万円を軽く超えます。その意味では、ある程度高コスパと考えられます。ただし一般的な高級モデルほどの仕上がりではなく、Thunderboltには非対応など機能を抑えた部分もあるので注意してください。
*
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