レノボの『IdeaPad Slim 170 14型 (AMD)』(以下、”IdeaPad Slim 170 14型”)は、14インチのフルHDディスプレイを搭載するノートPCです。据え置き用ながらも軽量スリムで、機能面も十分。価格は5万円台からと安く、コストを抑えたい人に向いています。
ただし、本体の作りはチープです。ボディは樹脂(プラスチック)製で、実際に使っていたところたわみが見られました。特に「TNパネル」を使ったディスプレイはやや青みが強く、スマホやタブレットと比べるとだいぶ見づらく感じます。
また今回試用した「Ryzen 5」モデルは、従来のRyzen 5よりも性能がだいぶ劣ります。ネットの調べ物や動画視聴、ちょっとした文書作成には問題なく使えますが、ガッツリ作業する人向けの機種ではない点に注意してください。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 1920×1080ドット TN 非光沢 220nit 45% NTSC |
CPU | Ryzen 3 7320U(4コア8スレッド) / Ryzen 5 7520U(4コア8スレッド) |
メモリー | 8GB LPDDR5-5500 ※オンボード増設不可 |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 610M ※CPU内蔵 |
通信 | Wi-Fo 6、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | USB3.2 Gen1 Type-C(映像出力 / USB PD対応)×1、USB3.2 Gen1×1、USB2.0×1、HDMI、SDメモリーカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | ※生体認証なし |
サイズ / 重量 | 幅325.3mm、奥行き216mm、高さ17.9mm / 約1.4kg |
バッテリー | 最大 約11.2時間 |
本体デザイン
IdeaPad Slim 170シリーズは価格重視のモデルで、作りは格安ノートPC相当です。ボディは樹脂(プラスチック)製で手触りにやや安っぽさがあるものの、見た目はそれほどでもありません。ただし強度についてはそれなりなので注意してください。
サイズと重量
一般的な15.6インチタイプよりも画面が小さいぶん、本体がコンパクトです。体感的には、A4サイズよりもひと回り大きい程度。厚みは少しありますが、低価格モデルであれば標準値の範囲内でしょう。
ディスプレイについて
画面サイズは14インチで、一般的な15.6インチよりもひと回り小さめです。標準ではデスクトップの拡大率が150%に設定されているため、文字が小さくて読めないことはありません。むしろ大きく感じるほどなので、125%あたりに変更するといいでしょう。
ディスプレイに使われているTNパネルは、一般的なIPSパネルと比べてかなり見づらく感じます。コントラストが低く、文字がかすれて見えることもあるでしょう。視力のいい人なら問題なく使えますが、視力に自信がない人には向いていないかもしれません。
キーボードについて
キーボードにはややクセがありますが、格安タイプのノートPCとしては標準的な作りです。人によっては気にならないかもしれませんが、タイプ感にこだわる人は注意してください。
ちょっと気になったのは、キーボード中央部分がやや盛り上がっている点。試用機固有の症状かもしれませんが、キーボード面の中央がわずかに高く、入力時の手の角度に違和感がありました。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 5 7520U(4コア/8スレッド、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB×1 |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(Radeon 610M、CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ソフト『Lenovo Vantage』で「電源およびパフォーマンス」を最高設定の「エクストリーム・パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
ストレージ性能
ストレージとしては、256GB SSDが使われています。使われているSSDはPCIe Gen3 x2で、アクセス速度は低速。価格が安いことを考えれば、仕方がないでしょう。
CPU性能
CPUとしてはAMDの「Mendocino(メンドシノ)」こと、モバイルRyzen 7020UシリーズのRyzen 3 7320UまたはRyzen 5 7520Uが使われています。今回テストで使ったのは、Ryzen 5 7520Uモデル。「Ryzen 5」と聞くとCPUに詳しい人なら性能が高いと思うかもしれませんが、ベンチマークスコアはかなり控えめな結果でした。軽めの作業なら問題ありませんが、従来のRyzen 5のイメージとは大きく異なるので注意してください。Ryzen 3 7320Uでは、さらに低い結果となるでしょう。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark 10 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
22327
|
Ryzen 7 5825U |
20302
|
Core i7-1260P |
20058
|
Ryzen 5 5625U |
18897
|
Core i5-1240P |
18571
|
Core i7-1255U |
17176
|
Core i5-1235U |
13951
|
Ryzen 5 5500U |
13315
|
Core i7-1165G7 |
11723
|
Core i3-1215U |
11681
|
Core i5-1135G7 |
11249
|
IdeaPad Slim 170(Ryzen 5 7520U) |
10029
|
Ryzen 3 5300U |
9527
|
Core i3-1115G4 |
6750
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
9254
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
Core i7-1255U |
7819
|
Core i5-1235U |
7708
|
Ryzen 5 5500U |
6779
|
Core i3-1215U |
6216
|
Core i7-1185G7 |
5668
|
Ryzen 3 5300U |
5140
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
IdeaPad Slim 170(Ryzen 5 7520U) |
4898
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
Core i3-1115G4 |
3378
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。モバイルRyzen 7020Uシリーズでは従来の「Vega」アーキテクチャから改良された「RDNA2」アーキテクチャを採用。しかしグラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストでは、かなり低い結果が出ました。
これはグラフィックスコアが2基で、スペック的にはダウングレードしているためです。現在の基準で判断すると、内蔵グラフィックスとしては最低レベル。あくまでも文字中心の作業専用と考えてください。
GPUの性能差(DirectX 11)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
Radeon 680M |
7521
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
4734
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
4059
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
3420
|
Radeon (Ryzen 7) |
3384
|
Iris Plus |
2880
|
Radeon (Ryzen 5) |
2652
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
2474
|
Radeon (Ryzen 3) |
2324
|
IdeaPad Slim 170(Ryzen 5,Radeon 610M) |
1761
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回ったものの、コンテンツ制作のテストではギリギリ超えた程度です。やはりグラフィックス性能の低さが、影響しているのでしょう。ビジネス利用のテストでは比較的優秀な結果が出ています。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
8193
9984
9409
10089
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7344
9266
6968
7094
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
3703
5987
5525
4889
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶ThinkPad E14 Gen4 | Core i5-1235U / 8GB / UHD |
▶HP ProBook 450 G9 | Core i3-1215 / 8GB / UHD |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は約11.2時間とされています。しかしこれはバッテリーの消費量をグッと抑えた場合の結果。公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこでビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から13時間41分で休止状態へ移行しました。公称値よりも長い結果ですが、バッテリー駆動時にはパフォーマンスが低下している可能性があるので注意してください。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びるかもしれません。
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約11.2時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 13時間41分 |
充電率50%までの時間 | - | 40分 |
満充電になるまでの時間 | - | 2時間04分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
割り切って使うならアリ
使えるには使えるのですが、いいノートPCを知っていると全体的に安っぽく感じます。特に気になるのは、見づらいディスプレイのTNパネル。角度を変えれば見づらさは改善されるものの、調整がけっこうシビアです。机の高さや座高によって変わりますが、筆者はディスプレイをだいぶ大きく開いて使うことになり、その際に照明がうっすらと映り込むことがありました。IPSやWVAのパネルを使ったディスプレイでは不要な労力なので、この点は面倒に感じます。
Ryzen 5なのにCPU性能が低い点については、ちゃんと理解しているなら問題ないでしょう。ただし非常に誤解しやすい部分なので、注意してください。最新のモバイルRyzen 7000シリーズでは、高性能なのはRyzen 5 7530Uで性能が低いのはRyzen 7 7520Uです。AMDはどうしてこんな命名規則にしちゃったんでしょうか。
2023年3月末の記事執筆時点では、今回取り上げたRyzen 5モデルは5万円台後半で販売されています。ノートPCとしては低価格ではあるものの、現在は高性能で画面が見やすい機種がもっと安く手に入ります。当サイトのTwitterアカウントでもセール情報を配信しているので、ぜひ参考にしてください。
https://komameblog.jp/bargain/vostro20230307/
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ただ、クーポンやポイント還元などでとても安く買えるならアリだと思います。目安としては実質価格で5万円切りあたり。このくらいであれば、お得感は高いでしょう。
ちなみにレノボからはCeleron N4120を搭載した『IdeaPad Slim 170i』という機種も販売されています。こちらはさらに性能が低いので、近づかないほうが無難です。
*
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