HPの『HP ProBook 450 G9』は、15.6インチタイプのビジネス向けスタンダードノートPCです。CPUは、高い性能が魅力の第12世代Coreプロセッサ。パーツカスタマイズでメモリーやストレージの容量を変えられるほか、高品質で耐久性の高いボディを採用しています。

HP ProBook 450 G9
今回は下位のCore i3-1215Uモデルを試したところ、前世代のCore i7搭載高級ノートPCを上回るほどの性能でした。パフォーマンス面は十分ではあるものの、Core i3 / 4GBメモリー / 128GB SSDで8万8000円と値段が高い点がネックです。企業での導入ならソリューションしだいで変わる場合がありますが、個人や小規模な会社ではちょっと厳しいかもしれません。

ビジネスでしっかり使える性能と作りですが、企業向けで値段が高め
この記事では筆者が購入した実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

HP ProBook 450 G9

スペック(直販モデル)
OS | Windows 11 Home / Pro または Windows 10 Pro |
---|---|
ディスプレイ | 15.6インチ 光沢 250nit タッチ非対応 |
パネル | 1920×1080ドット UWVA または 1366×768ドット |
CPU | Core i3-1215U / Core i5-1235U / Core i7-1255U |
メモリー | 4GB×1 / 8GB×1 / 8GB×2 / 16GB×2 ※DDR4-3200 最大32GB |
ストレージ | 128GB~1TB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD(Core i3) / Iris Xe(Core i5 / i7) |
通信 | Wi-Fi 6またはWi-Fi 6E、Bluetooth5.2、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB Type-C×1(映像出力対応)、USB Type-A×3、HDMI、有線LAN、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋センサー |
サイズ / 重量 | 幅359.4mm、奥行き233.9mm、高さ19.9mm / 約1.79kg~ |
バッテリー | 最大 9時間51分 |
本体デザインと各部の機能
HP ProBook 450 G9のデザインは、ビジネス向けの15.6インチとしては洗練されています。ボディはアルミ製で、高級感のある仕上がり。さらに米国国防総省制定の耐久基準『MIL-STD-810H』準拠の高い耐久性を備えた頑丈な作りです。

HP ProBook 450 G9の外観。本体カラーは明るめのシルバー。天板のロゴは鏡面仕上げです

エッジ部分はやや丸みを帯びながらも、全体的には角の立ったシャープなデザイン

ボディは質感と剛性に優れるアルミ製。天板上部にはWi-Fi電波受信用のアンテナラインが配置されています

ディスプレイを開いた状態

ディスプレイは最大で180度近くまで開きます

キーボード面もシルバー。タッチパッドの周囲にはキラリと光るダイヤモンドカット加工が施されています

カメラはプライバシーシャッター付き。写真撮影は1280×720ドットの92万画素、動画撮影は720p 30Hzに対応しています

パームレストには指紋センサー

スピーカーはキーボード上部に配置。サラウンド感はそこそこあるものの、低音はかなり弱く、全体的に音がこもり気味です。ビデオ会議や動画視聴には問題ないものの、あまりクリアーには聞こえませんでした

ディスプレイのベゼル(枠)はカメラが配置されている上部がやや太いものの、全体的にはやや細め。画面周りがスッキリとしています

インターフェースは十分な構成ですが、メモリーカードスロットがない点が残念。Type-Cは映像出力とUSB PD充電に対応しているものの、Type-Cで充電すると「純正アダプターを使いましょう」的なメッセージが表示されます

電源アダプターは45Wの丸口タイプ。重さは236gで、やや大きめです

排気口はこの部分

底面部には吸気口。底面カバーを取り外す際は、ゴム足を外す必要があります
サイズと重量
HP ProBook 450 G9はスリムではあるものの、大きさと重さは標準的。公式サイトには「A4ノート」と紹介されていますが、大きさはB4サイズよりもやや小さい程度です。それなりの存在感があります。

幅359.4mm、奥行き233.9mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。大きさ的にはB4サイズよりひと回り小さい程度です

高さは実測で20.3mm(突起部を除く)。数値的には薄くはないものの、本体がやや大きいぶん数値以上にスリムに感じます

底面部のゴム足(突起部)を含めた高さは23.3mm。設置時にはやや厚く感じるでしょう

重さは実測で1.724kg。最近の15.6インチとしては、標準的な重さです
ディスプレイについて
ディスプレイは標準的なスペックです。ただしモデルによっては、解像度が低いことがあるので注意してください。ビジネス向けのため、映像はスマホやタブレットほど鮮やかではありません。しかし文字や数値データ中心の作業であれば、特に気にならないでしょう。

画面サイズは15.6インチ。解像度は1920×1080が標準ですが、1366×768ドットの場合があります。解像度が低いと作業効率が低下するので注意してください

映像の色合いは普通ですが、スマホやタブレットほど鮮やかではありません。おそらくNTSC 45%あたりの安いパネルで、個体差によっては画面が黄色く感じる場合があるでしょう

公式スペックの「UWVA」はパネルの種類ではなく、「Ultra Wide View Angel(超広視野角)」の略。IPSとは異なりますが、視野角についてはIPS相当と考えていいでしょう

明るさは公称値で250nit。数値的には、やや暗めです。作業中に見づらく感じることはないものの、明るい場所では画面が少し暗く感じるかもしれません
キーボードについて
キーボードは若干クセがあります。配列は一般的ですが、キーピッチ(キーとキーの間隔)が18mmと狭く(19mmが一般的)、やや窮屈に感じました。慣れれば普通に使えると思いますが、はじめのうちは違和感があるかもしれません。

キーボードはテンキー付きの日本語配列。バックライトには対応していません

キートップはややザラつきのある手触り。文字はシルク印刷で、文字の部分にコーティングが施されています。格安ノートでよく見かける仕上がりです

特殊になりがちなEnterキー周りの配列も、一見すると違和感はありません

実際に入力するとキーとキーのあいだが狭く、指の動きが窮屈に感じます。キーストロークは公称値で1.5mmと標準的ではあるもののクリック感が弱く、タイプ感は軽めです

タイプ音は軽い力でもカタカタと聞こえます。静かな場所では、周囲への配慮が必要かもしれません。強く叩くと音が響くので、軽めのタッチ推奨です
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i3-1215U(6コア8スレッド、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB(4GB×2、DDR4-3200) ※増設済み |
ストレージ | 128GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUは、第12世代のCore i3-1215U / Core i5-1235U / Core i7-1255Uです。今回はもっとも性能が低いCore i3-1215Uモデルでテストを行ないました。
ベンチマーク結果で見ると、Core i3-1215Uは中間よりもやや下あたりです。しかし第12世代のCore i3で、前世代のCore i7を上回っている点がポイント。1~2年前のハイエンドクラスノートPC相当と考えれば、優秀な結果と考えていいでしょう。Core i3でもよっぽど重い処理でない限り、ビジネス作業では十分通用します。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark 10 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
22327
|
Ryzen 7 5825U |
20302
|
Core i7-1260P |
20058
|
Ryzen 5 5625U |
18897
|
Core i5-1240P |
18571
|
Core i7-1255U |
17176
|
Core i5-1235U |
14919
|
HP ProBook 450 G9(Core i3-1215U) |
12268
|
Core i7-1165G7 |
11723
|
Core i3-1215U |
11681
|
Core i5-1135G7 |
11249
|
Core i3-1115G4 |
6750
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
9254
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
Core i7-1255U |
7819
|
Core i5-1235U |
7104
|
Core i3-1215U |
6216
|
HP ProBook 450 G9(Core i3-1215U) |
6034
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
Core i3-1115G4 |
3378
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能には、CPU内蔵のUHD Graphics(Core i3)またはIris Xe Graphics(Core i5 / i7)が使われます。Core i3搭載の試用機で3Dベンチマークテストを行なったところ、ワンランク下のUHD Graphicsとしてはなかなか優秀な結果が出ました。ただし最近の傾向のなかではやや非力で、ゲームやグラフィックスソフトでの公開はあまり期待できません。Iris Xeを使用するCore i5 / i7モデルであれば、もう少し高性能でしょう。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
HP ProBook 450 G9(UHD) |
980
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
Iris Plus |
812
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回っており、普通の使い方であればまったく問題ありません。コンテンツ制作系は若干弱いながらも、目標値はかろうじて上回っています。小規模な作品程度なら、問題なく使えるでしょう。
注目したいのは、一般利用テスト(Web閲覧、ビデオ会議など)のスコアです。軽い処理であれば、上位CPUを搭載した機種と変わりません。ただしビジネス利用(表計算とワープロ)のテストではスコアがやや低め。大量の数値データを扱ったり画像 / 表などを多用する文書作成には、Core i5 / Ryzen 5以上のほうが有利です。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10089
9984
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7094
9266
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
4889
5987
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリー駆動時間は最大9時間51分とされています。ただしこれはパフォーマンスをグッと落とした状態での計測結果で、実際の駆動時間は公称値よりも短いのが一般的です。
そこでCore i3モデルを使って最大パフォーマンス時におけるビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、10時間17分でバッテリー切れとなりました。据え置き用のスタンダードノートPCでこれだけもてば十分でしょう。
ただし、バッテリー駆動時はパフォーマンスが抑えられている可能性があるので注意してください。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Core i3モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 最大 9時間51分 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 10時間17分 |
充電率50%までの時間 | - | 1時間9分 |
満充電になるまでの時間 | - | 2時間48分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
ゲーム性能
Core i3-1215U搭載モデルでゲーム系ベンチマークを試したところ、ごくごく軽いゲームなら画質を落とせば普通に楽しめそうな結果が出ました。ただしやや重い程度の中量級以上のタイトルになると、かなり厳しそうです。リフレッシュレートも高くないので、仕事のあいまに息抜きとして軽めのゲームを楽しむ程度と考えてください。
なおCore i5 / i7モデルではテスト結果は改善されるはずですが、サクサク快適に楽しめるほどではありません。
検証結果まとめ
- ・やや重いタイトルはムリ
- ・超軽いゲームならOK
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ヴァロラント 屋外射撃場(超軽い)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 52.7 / 28.5 |
最低画質 | 116.2 / 46.6 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが10%程度低下します
ドラクエXベンチ (超軽い)

画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 7680 / とても快適 |
標準品質 | 9385 / とても快適 |
低品質 | 10396 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 2453 / 16.6 FPS |
高品質 | 3383 / 23.1 FPS |
標準品質 | 4499 / 31.1 FPS |
品質も性能も十分だけど値段が高い
ビジネス向けノートPCとしては、手堅い作りです。キーボードにややクセがあるものの、インターフェース構成もディスプレイも標準的。本体はスリムかつ高品質な仕上がりで、野暮ったさは感じられません。ワンランク上のビジネス向けスタンダードノートPCとしては、十分アリだと思います。
しかし、いまのところ価格の高さがネックです。直販の標準モデルは、Core i3-1215U / 4GBメモリー / 128GB SSDの構成で8万8000円から(2023年1月末時点)。パーツカスタマイズで8GBメモリーと256GB SSDにアップグレードすると、10万円を超えます。そこまでいくくらいなら、11万円台のCore i5モデルを選んだほうがいいでしょう。

モノはいいけど、値段が高い
ただしビジネス向けモデルは、ソリューション込みの一括導入であると値段が大きく変わることがあります。企業での導入を検討しているなら、まずは直販サイトに電話で問い合わせてみてください。

HP ProBook 450 G9
