ASUSの「ROG Flow X16 (2022)GV601(以下、”ROG Flow X16 GV601″)」は、16インチ2560×1600ドットのディスプレイを搭載する2-in-1タイプのゲーミングノートPCです。Zen3+世代のRyzen 7 6800HSとGeForce RTX 30シリーズを搭載するミドルレンジ~ハイミドルクラスで、人気ゲームを快適にプレー可能。さらにミニLEDによる鮮やかな映像やNキーロールオーバーのキーボードなど、ゲーマー向けの機能が盛り込まれています。

ROG Flow X16 GV601
ポイント
- 😄 ミニLEDによる鮮やかな映像
- 😄 フレキシブルに使える2-in-1
- 🙄 値段が高い
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

ROG Flow X16 (2022)GV601
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 16インチ 2560×1600 165Hz 3ms 光沢 タッチ対応 DisplayHDR 1000対応 DCI-P3 100% |
CPU | Ryzen 7 6800HS |
メモリー | 16GB DDR5-4800 |
ストレージ | 512GB / 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3060(6GB)/ RTX 3070 Ti(8GB) |
通信 | 11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C×2(USB PD / 映像出力対応)、USB3.2 Gen2×2、ROG XG Mobileインターフェイス、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドセット端子 |
生体認証 | 顔認証用IRカメラ |
サイズ / 重量 | 幅355×奥行き243.5×高さ22.9mm / 約2.15kg |
バッテリー | 4セル 90Wh 約7.9時間駆動 |
本体デザイン

本体カラーはオフブラック。ボディはマグネシウムまたはアルミニウムマグネシウム合金のような感触です

表面に斜めのラインが描かれており、角度によって表情が変わる点がユニーク。指紋の跡は少し目立ちます

キーボード面もブラック。剛性に優れるアルミ素材が使われています

キーボードはRGBバックライトに対応。標準収録のソフトで、発光パターンを変更できます

ベゼルは2-in-1タイプとしてはかなり細め。画面周りがとてもスッキリとしています

画面を360度回転させられるタイプの2-in-1

お気に入りのゲーミングデバイスを使えるほか、テントモードだと底面部の吸気口が接地面でふさがれないためエアフローが改善する効果があります

左側面のインターフェース。中央付近にはROG XG Mobileインターフェイスが用意されており、別売りのGPUドックを利用可能です

外付けGPU(eGPU)ボックスとして利用するROG XG Mobile

右側面のインターフェース。主な端子類が左右に配置されているので、本体の両脇がケーブルでゴチャつきやすいかもしれません

電源アダプターは240Wの丸口タイプ。重さは709gでけっこう重め

スピーカーは1W×4構成。4つのうちふたつは底面部に配置されています

残りのふたつはおそらくキーボード両脇あたり。音の広がりがよく、解像感も高め。ノートPCとしてはかなり高音質です。ただし重いゲームのプレー中は駆動音が大きいので、ゲーミングヘッドセットの着用を推奨します

排気口は本体背面と右側面

底面部には吸気口
サイズと重量

本体サイズは横35.5cm、縦24.35cm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。大きさ的にはB4サイズよりもひと回り小さい程度。数値的にはけっこう大きいのですが、16インチタイプとしてはコンパクトです

厚さは実測で21.5mm(突起部を除く)

本体背面。ゴム足(突起部)を含めた設置時の高さは24.8mm。スペック的には3cm超えでもおかしくないレベルですが、なかなかスリムです

重さは実測で2.168kg。ゲーミングノートPCとしては標準的な重さ
ディスプレイについて

ディスプレイは16インチで、解像度は2560×1600ドット。アスペクト比16:10の高精細タイプです

パネルには最新技術である「ミニLED」が使われています。バックライトを微細化することで細かな明暗コントロールが可能となり、従来の液晶よりも高いコントラストが可能となりました

映像は非常に色鮮やかで、有機ELかと思うほど。特に従来の液晶よりも”黒”がしっかり黒っぽく出ています。さらにVESA DisplayHDR 1000対応。HDR対応ゲームでは白が飛ぶことなく細かな明暗がクッキリ映し出され、ゲーム映像が驚くほど鮮やかです

色域は公称値でDCI-P3 100%。クリエイティブワークにも利用できるほど高品質です

リフレッシュレートは最大165Hzで、応答速度は3ミリ秒。ゲーミングノートPCでは応答速度は通常4~6ミリ秒程度。より残像と遅延のない映像で、本格的なプレーを楽しめます

カジュアルゲーマーの筆者が実際にゲームをプレーしてみたところ映像の動きは非常に滑らかで、残像はまったく気になりませんでした
キーボードについて

キーボードはテンキーなしの日本語配列

Enterキー周辺で一部のキーが隣接しています

すべてのキー入力同時に認識できるNキーロールオーバー対応。複雑なキー操作でも誤認識なく利用できるゲーマー向けのキーボードです

キーピッチは実測で18.8mm。標準値である19mmよりもわずかに狭いのですが、特に気になりませんでした。キーストロークは約1.7mmで、ノートPCとしては深めに作られています

キーを押した瞬間のクリック感はやや軽めですが、ストロークが深いので手応えはしっかり感じられます。タイプ音は「タクタク」といった感じで、軽いタッチならけっこう静かです
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 6800HS |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3070 Ti (8GB) |
最大グラフィックスパワー | 125W |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Amoury Crate」で「Turbo」モードに変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、AMD Zen3+世代のRyzen 7 6800HSが使われています。CPUベンチマークではインテルの第12世代Core i7 / i9には及ばなかったものの、前世代のRyzen 5000シリーズを上回る優秀な結果が出ています。ゲームはもちろん、動画編集などの重い処理にも適したパフォーマンスです。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
21119
|
Core i7-12700H |
15066
|
ROG Flow X16 GV60(Ryzen 7 6800HS) |
13898
|
Ryzen 9 5900HX |
12654
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Core i7-11800H |
11123
|
Ryzen 5 5600H |
8901
|
Core i5-11400H |
7529
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、ミドルレンジのGeForce RTX 3060とハイミドルのRTX 3070 Tiが使われています。今回試用したのはRTX 3070 Tiのモデルで、最大グラフィックスパワーは125Wに設定されていました。仕様上のGPUサブシステム電力は最大125Wではあるものの、Dynamic Boost2.0を使えばもう少し上乗せできるはずです。GPU的には余力がありそうですが、比較的薄い筐体であることを考えればこのあたりでも十分でしょう。
3Dベンチマーク結果を見ると、順当な結果が出ています。前世代のミドルハイであるRTX 3070を上回り、ハイエンド向けのRTX 3080に迫るパフォーマンスです。Time Spyのテストでは理想値の1万あたりの結果が出ていることから、WQHD(2560×1440ドット)ターゲットのGPUであると考えていいでしょう。
WQHD環境下におけるレイトレ性能のテストであるPort Royalでは、6000を少し超えている程度。タイトルにもよりますが、レイトレ有効ならフルHDあたりがターゲットだと思われます。
GPUの性能 (DirectX 12、WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
13493
|
RTX 3080 |
11612
|
ROG Flow X16 GV60(RTX 3070 Ti) |
10357
|
RTX 3070 |
9707
|
RTX 2080 |
9599
|
RTX 3060 |
8297
|
RTX 2070 |
7660
|
RTX 2060 |
5860
|
GTX 1660 Ti |
5626
|
RTX 3050 Ti |
5207
|
RTX 3050 |
4426
|
GTX 1650 Ti |
3686
|
GTX 1650 |
3178
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (DirectX 11、フルHD)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
30787
|
RTX 3080 |
28274
|
ROG Flow X16 GV60(RTX 3070 Ti) |
27297
|
RTX 3070 |
25161
|
RTX 2080 |
25078
|
RTX 3060 |
21476
|
RTX 2070 |
20037
|
RTX 2060 |
15685
|
GTX 1660 Ti |
14451
|
RTX 3050 Ti |
13528
|
RTX 3050 |
11051
|
GTX 1650 Ti |
10123
|
GTX 1650 |
8758
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (レイトレーシング)
GPU | 3DMark Port Royal Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
8527
|
RTX 3080 |
7148
|
ROG Flow X16 GV60(RTX 3070 Ti) |
6319
|
RTX 3070 |
5957
|
RTX 2080 |
5675
|
RTX 3060 |
4909
|
RTX 2070 |
4498
|
RTX 2060 |
3330
|
GTX 1660 Ti |
1487
|
RTX 3050 Ti |
585
|
RTX 3050 |
537
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
なおRyzen 7 6800HSはRDNA2アーキテクチャベースの内蔵グラフィックス「Radeon 680M」により、グラフィックス性能が大きく向上しているとのこと。しかし今回の検証では設定を変更してもdGPUが干渉しているようで、内蔵グラフィックスのみの結果を得られませんでした。別の機会があれば検証するつもりです。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
ベンチマークテストの結果は非常に優秀で、従来のミドルハイクラスと同等以上のスコアが出ています。ゲームだけでなく、画像や写真などを扱うクリエイティブワークでも活躍するでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10533
9477
8362
9667
9418
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
9996
6534
8253
8530
7927
8766 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
10139
5363
6187
8109
8486
10284 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Surface Studio | Core i7-11370H / 16GB / RTX 3050 Ti |
▶Inspiron 16 Plus | Core i7-11800 / 16GB / RTX 3050 |
▶raytrek R5-CA | Core i7-10875H / 16GB / RTX 3060 |
▶GALLERIA UL7C-R37 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3070 |
CPUの発熱について
CPUベンチマーク時におけるCPUとGPUの熱を計測したところ、ちょっと変わった結果が出ました。
テスト開始直後から95度の高温が2分間続き、その後はゆるやかに低下しながら最終的には78度付近を推移しています。90度以上の高温が2分間続くのは非常に珍しく、一般的には長くても30秒程度です。ROG Flow X16 GV601では高出力の時間帯を一般的なノートPCよりも長く維持することで、高いパフォーマンスを実現しているのだと思われます。そのぶん、内部の冷却性能も優秀なのでしょう。

CINEBENCH R23を10分間実行し続けた際のCPUとGPUの温度。CPUは平均82.3度で、GPUは63.3度
キーボード面の温度はゲームでよく使うWASDキー周りはかなり抑えられているものの、排気口付近は触ると熱く感じるほど高温です。ノートPC冷却台を使うなどの熱対策を行なうことをおすすめします。

ベンチマークテスト中のキーボード面の温度
GPUの発熱について
GPUに強い負荷のかかる3DMarkのストレステストでは、CPUは平均83.3度でGPUは平均84.9度でした。PCにとって危険な温度ではないものの、好ましいほどでもありません。やはり冷却台やチューニング等の熱対策を行なうほうがいいでしょう。

3DMark Time Spy Stress Testを10分間実行し続けた際のCPUとGPUの温度
ゲーム性能
ゲーム系ベンチマークおよびFPS計測では一部のタイトルを除き、WUXGA(1920×1200ドット)とWQXGA(2560×1600ドット)の解像度でテストを行なっています。
各種テストの結果から判断するに、処理の重いゲームでも快適に遊べる目安(平均60FPSオーバー)をクリアーできるでしょう。165Hzのなめらかな動きを堪能するには、少し軽めのゲームを選んだりを画質を調整する必要がありそうです。レイトレーシングについては、WUXGAでのプレーを前提にしてください。
人気のFPS/TPSについては、処理がやや重い中量級タイトルでも解像度や画質しだいで165Hzのなめらかな動きを楽しめます。処理が軽い競技系タイトルなら、常時ヌルヌルな動きでプレーできるでしょう。
検証結果まとめ
- ・激重タイトルでもWUXGAなら快適
- ・WQXGAでも平均60FPS超
- ・レイトレはWUXGAでならOK
- ・中量級FPSは画質調整でWQXGAでも快適
- ・競技系FPSでも最高画質で200FPS超
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 9485 / とても快適 |
標準品質 | 10454 / とても快適 |
軽量品質 | 12486 / 非常に快適 |
※フルHDの結果。スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
フルHD 最高品質 | 18457 / 135.8 FPS |
WQXGA 最高品質 | 14473 / 101 FPS |
ファークライ6(ちょっと重い / DX12)
レイトレ無効
設定 | 平均FPS / 最小FPS |
1920×1200 最高品質 | 85 / 68 |
2560×1600 最高品質 | 70 / 63 |
レイトレ有効
設定 | 平均FPS / 最小FPS |
1920×1200 最高品質 | 73 / 67 |
2560×1600 最高品質 | 59 / 54 |
サイバーパンク2077 (重い / DX12)
レイトレーシング:ウルトラ ※DLSS:バランス
解像度 | 平均FPS / 最低FPS |
1920×1200 | 62.87 / 43.24 |
2560×1600 | 42.72 / 33.02 |
ウルトラ ※DLSS:バランス
解像度 | 平均FPS / 最低FPS |
1920×1200 | 95.89 / 51.62 |
2560×1600 | 62.9 / 47.99 |
アサシン クリード ヴァルハラ (重い)
設定 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 最高画質 | 88 / 59 |
2560×1600 最高画質 | 72 / 49 |
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
設定 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 最高画質 | 168.8 / 121.7 |
2560×1600 最高画質 | 126.6 / 94.3 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
レインボーシックス シージ(軽い)
設定 | 平均FPS / 最低FPS |
1920×1200 最高画質 | 292 / 221 |
2560×1600 最高画質 | 231 / 177 |
※ゲーム内ベンチマークの結果
CS:GO FPS Benchmark(軽い)
設定 | 平均FPS |
1920×1200 最高画質 | 314.25 |
2560×1600 最高画質 | 216.09 |
※ワークショップ内のマップ「FPS Benchmark」を使用
ヴァロラント 屋外射撃場(超軽い)
設定 | 平均FPS / 最低FPS(1percentile) |
1920×1200 最高画質 | 268.6 / 129.8 |
2560×1600 最高画質 | 243 / 125.2 |
※屋外射撃場で武器を使用しながら走り回った結果。実際のプレーではこの結果よりもFPSが10%程度低下します
機能山盛りのプレミアムなゲーミングノートPC
高性能パーツ搭載でパフォーマンスが高い点も特徴のひとつですが、なによりも先進技術やゲーマー向けの機能をふんだんに採用している点が大きな魅力です。特にミニLEDパネルによる映像の鮮やかさは圧巻のひと言。FPSなどの対戦プレーには大きな影響はないものの、グラフィックスの美しいタイトルを楽しむにはもってこいです。まさにプレミアムなゲーミングノートPCと言っていいでしょう。
ただしそのぶん、お値段もプレミアムクラスです。RTX 3060搭載モデルなら税込で32万円前後、上位のRTX 3070 Tiモデルなら37万円前後。同じGPUを搭載する一般的なゲーミングノートPCに比べて、2倍程度に設定されています。値段が障壁ではないなら、検討する価値は大いにあるでしょう。

ROG Flow X16 (2022)GV601
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