レノボのThinkPad X1 Foldは、折りたたみ可能な13.3インチタブレットです。半分に折りたためば、システム手帳のように持ち歩きが可能。付属のキーボードを使えばノートPCとしても利用できます。非常に先進的で、ガジェットとしての魅力にあふれる機種です。

ThinkPad X1 Fold
ThinkPad X1 Foldのスペック
OS | ・Windows 10 Home ・Windows 10 Pro |
---|---|
画面サイズ | 13.3インチ |
解像度 | 2048×1536 |
CPU | Core i5-L16G7 |
メモリー | 8GB ※オンボード、最大8GB |
SSD | 256GB~1TB |
HDD | なし |
グラフィックス | UHD |
モバイル通信 | ・なし ・5G |
堅牢性テスト | MIL-STD-810H準拠 |
色域 | 95% DCI-P3 |
幅×奥行き | 158.2×236mm(折りたたみ時) 299.4×236mm(展開時) |
厚さ | 27.8mm(折りたたみ時) 11.5mm(展開時) |
重量 | 973g(タブレット本体) |
バッテリー | 11.7時間 |
※2021年4月22日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | ブラック |
---|---|
画面の表面 | 光沢 |
パネルの種類 | OLED |
タッチ / ペン | 対応 |
光学ドライブ | - |
テンキー | - |
有線LAN | - |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | 5.0 |
USB3.1 | - |
USB3.0 | - |
USB2.0 | - |
USB Type-C | 2(USB3.1 Gen2) |
Thunderbolt | - |
メモリーカード | - |
HDMI | - |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | - |
その他 | - |
Webカメラ | 720p HD(92万画素) |
顔認証カメラ | 搭載 |
指紋センサー | - |
付属品 | ACアダプター、Lenovo Mod Pen、Lenovo Bluetooth Mini Foldキーボードなど |
オフィス | オプション ※付属モデルあり |
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ

※2021年4月22日時点
デザインと使いやすさ
外観について
ThinkPad X1 Foldはやや大きめの13.3インチタブレットですが、画面を中央に折り曲げることでさまざまなスタイルで利用できます。見開きの本のように手で持ったり、自立させてコンパクトなデスクトップPC風に使ったり、あるいは小型ノートPCとして使ったり、アイデアしだいでいろいろ活用できます。筆者もいくつかパターンを考えてみましたが、おそらくさらに便利な使い方があるはずです。

完全に開いた状態では13.3インチタブレットとして使えます

中央で軽く折り曲げれば本のようなスタイルに

電子書籍を見開きで表示すると、1ページはB6版コミックに近い大きさで表示されます

背面にはスタンド

タブレットの状態で自立が可能

縦向きに設置する場合はちょっと大きめのスタンドが必要です

ソフトウェアキーボードを使って、ノートPC風に使うことも可能

付属キーボードをセットすると画面が半分だけ表示され、コンパクトなノートPC風に
画面の折り曲げについては、特に違和感なく行なえます。最初は折り曲げることにちょっと抵抗があったのですが、なにごともなく普通に曲がりました。ただし長期間使うと可動部分やカバー部分が劣化するのではないかとちょっと心配に感じます。

特に抵抗なく、軽い力で普通に曲がります

折り曲げた部分も普通に映像が表示されています。将来的に劣化するのではないかとちょっと不安

外側のカバーは折り曲げた際にスライドして、光沢仕上げの本体の一部が現われます

折り曲げて閉じた状態。まるでシステム手帳のようです
本体カラーはブラック。背面には本革(authentic leather)が使われています。ボディの素材はカーボンファイバーとのことですが、別のスペックシートにはマグネシウム合金と記載されていました。米国防省制定の耐久基準「MIL-STD-810H」準拠で、とても頑丈に作られています。

背面は本革を使ったカバー

展開時の大きさは幅299.4×奥行き236mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較

折りたたみ時は幅158.2×奥行き236mm

手で持ったときのサイズ感

折りたたみ時は付属のLenovo Bluetooth Mini Foldキーボードをなかに挟めます

キーボードをはさまない状態で厚さは実測26.8mm、はさんだ状態では実測27.6mm

展開時の厚さは実測で11.4mm

ベゼル幅は左右14.4mm、上部16.4mm、下部17.1mm。やや太めですが、折り曲げ機構を採用していることを考えれば仕方がないでしょう

重さは実測で1.154kg

付属の電源アダプターはType-Cタイプで65W。重さは265g
ディスプレイについて
ディスプレイのサイズは13.3インチで、解像度は2048×1536ドット。画面のアスペクト比(横と縦の比率)は4:3で、一般的な16:9に比べてやや縦長に作られています。画面はタッチ操作に対応しているほか、ペンを使った手書き入力も可能です。

全画面表示時のデスクトップ。文字の大きさは2~2.6mm(スケーリング150%)

付属のLenovo Mod Pen

標準収録の「Lenovo Mode Switcher」でウィンドウを画面半分に表示可能

画面半分で利用する際は、9.6インチの1536×1006ドット(アスペクト比3:2)
ディスプレイには発色に優れるOLED(有機ELディスプレイ)が使われています。コントラストが高く(公称値では5000:1)、写真や動画はとても鮮やかに映し出されました。
OLEDと言えばパネルの焼き付きが気になりますが、今回は検証期間が短かったため、焼き付きを確認できませんでした。ただ使い方によっては焼き付く可能性があるので、画面はなるべく暗く&頻繁にディスプレイの電源を切るなどして予防するといいでしょう。標準ではウィンドウの背景が黒に指定されているのも、焼き付きを防ぐためかもしれません。

映像は自然な色合い。色域はDCI-P3 95%と高いのですが、パフォーマンスが高くないのでクリエイティブワーク向きではありません

明るさは公称値で300nit。特別明るいわけではありませんが、十分なレベルです

解像度が高いので、写真が細部まで鮮明に映し出されます
キーボードについて
付属のキーボードを利用すれば、ThinkPad X1 FoldをノートPCのように使えます。ただしキーボードは非常に小さく、配列もやや特殊。タイプ感もいいわけではありません。長時間利用するなら、別のキーボードを使ったほうがいいでしょう。折りたたみ時に一緒に持ち歩ける点が唯一のメリットです。

接続はBluetooth。側面にスイッチと充電用のmicroUSB端子が用意されています

キーボードは極薄。厚さはわずか4.5mmです

一般的な配列よりもキーの数が少なく、記号類はFnキーを押しながら入力します。キーピッチは実測17.8mmでキーストロークは実測で平均1.05mm
インターフェース/機能について
周辺機器接続用のインターフェース(端子)類は、USB Type-Cのみ。5G対応モデルではnanoSIMカードスロットが付いていますが、基本的にはそのほかの端子類はありません。外出先で手帳として使うのであれば必要ないかもしれませんが、少々物足りなく感じます。必要な場合は、Type-Cドックを利用してください。
Type-C端子の機能
USB PD 18W充電 | △ ※低速充電 |
---|---|
USB PD 30W充電 | ○ |
USB PD 45W充電 | ○ |
USB PD 65W充電 | ○ |
USB PD 100W充電 | ○ |
映像出力 | ○ |
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-L16G7 |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 512GB SSD |
グラフィックス | UHD Graphics |
※各ベンチマークテストは電源ケーブルを接続し、Windows 10の電源プランを「バランス」に設定した上で電源モードを「最も高いパフォーマンス」に設定しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、開発コード「Lakefield」ことCore i5-L16G7が使われています。これは5コア5スレッドのCPUと内蔵GPU、そして8GBのLPDDR4X 4267 POPメモリーをひとつのパッケージにまとめた”ハイブリッドプロセッサー”です。消費電力が低くCPUのサイズも小さいので、モバイルPCやタブレットPCなどに向いています。
名前に「Core i5」と付いていることから性能はそこそこレベルだと思うかもしれませんが、CPUベンチマークテストでは意外に低い結果が出ました。機能や形状としては先進的なのですが、性能的には4~5万円台の格安ノートPCと同等クラスです。

CPUの性能比較(マルチコア性能) ※そのほかのスコアは当サイト計測の平均値

CPUの性能比較(総合性能) ※そのほかのスコアは当サイト計測の平均値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUHD Graphicsが使われます。Core i5-L16G7モデルで3Dベンチマークテストを実施したところ、UHDシリーズとしては妥当な結果でした。しかし最近はCPU内蔵グラフィックス機能の性能が向上していることを考えると、いまいち物足りない結果です。もっともゲームやクリエイター向けソフトを使わないのであれば、特に問題はないでしょう。

3D性能の比較(Fire Strike) ※そのほかのスコアは当サイト計測の平均値
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。Core i5-L16G7搭載の試用機でテストを行なったところ、一般利用(ビデオ会議やWeb閲覧など)のテストのみクリアーできました。ビジネス利用(表計算やワープロ)/コンテンツ制作(写真加工や動画編集)では厳しいとのこと。あくまでも軽めの作業に適しています。

PCMark 10ベンチマークスコア ※目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
ストレージのアクセス速度
ストレージは256GB~1TB SSDです。テスト機ではPCIe 3.0 x4接続の超高速タイプが使われおり、アクセス速度はそこそこ高速でした。ただし負荷の高いテストを連続して行なうとアクセス速度が若干低下するので、サーマルスロットリングによる影響が生じているのかもしれません。とは言え、この機種でそこまでストレージをゴリゴリに使うことはないでしょう。

512GB SSDのアクセス速度。左が通常計測時で、右が高負荷時
起動時間
ウィンドウズの起動時間(バッテリー駆動時)は平均26.96秒でした。最近のSSD搭載ノートPCの平均は15秒前後ですので、起動は若干遅く感じます。頻繁にシャットダウンするような機種ではないので影響は小さいはずですが、少々残念です。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 27.8秒 |
---|---|
2回目 | 26.3秒 |
3回目 | 26.4秒 |
4回目 | 27.4秒 |
5回目 | 26.9秒 |
平均 | 26.96秒 |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間の公称値は、11.7時間とされています。しかしこれはバッテリー消費量を極端に落とした状態での結果で、実際の駆動時間とは異なる場合がほとんど。公称値よりも短いことが普通です。
そこで最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、6時間3分で休止状態へ移行しました。バッテリー消費がもっとも多い状態とは言え、ちょっと心もとない結果です。外出先で利用する場合は電源オプションを変更し、ディスプレイの明るさを落としたほうがいいかもしれません。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i5モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 11.7時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 6時間3分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 31分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間3分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
先進的だがコスパの低さが残念
よかった点
ディスプレイを折り曲げることで、さまざまなスタイルで利用できる点が最大のメリットです。折りたためばシステム手帳程度の大きさで、持ち歩きにも便利。ガジェット感のあふれる機種です。
気になる点
折り曲げ機構が構造的に不安です。もちろん耐久テストを行なっているはずですが、経年劣化によってどうなるか現在のところわかりません。特にカバーやヒンジが劣化しないかという点に不安を感じます。
またパフォーマンスが低い点も残念です。PCは性能がすべてではないものの、30万円以上出して性能がCore i3以下のPCを入手する意味があるのか疑問に感じてしまいます。折りたためる点が最大の特徴なので、そこに30万円程度の価値を見いだせるならアリです。

※2021年4月22日時点
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