ASUSの『Zenbook 15 OLED UM3504DA』は、2880×1620ドットの高精細なOLEDディスプレイを搭載する軽量スリムなスタンダードノートPCです。CPUはZen3+世代のRyzen 7 7735U。基本性能が非常に高く、高度な処理からちょっとしたゲームまでこなせます。
性能的には、薄型ノートPCとしてはトップクラス(2023年6月上旬時点)。大作ゲームや高度な動画編集には向かないものの、あらかたの処理は問題なく行なえるでしょう。作業のあいまに、ゲームをちょっと楽しむのもアリ。ちょっとしたクリエイティブワークにも活用できる仕上がりです。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Zenbook 15 OLED UM3504D
スペック
発売日 | 2023年5月26日 |
---|---|
本体カラー | ポンダーブルー / バサルトグレー |
OS | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 15.6インチ、2880×1620ドット、OLED、光沢、120Hz |
CPU | Ryzen 7 7735U(8コア16スレッド) |
メモリー | 16GB LPDDR5-6400 ※オンボード |
ストレージ | 512GB Gen4 NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 680M(CPU内蔵、RDNA2) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1、有線LAN(付属のUSBアダプター使用) |
インターフェース | HDMI、USB4(USB PD/映像出力対応)×1、USB 3.2 Gen2 Type-C(USB PD/映像出力対応)×1、USB3.2 Gen1×1、ヘッドホン入力 |
セキュリティー | 顔認証用IRカメラ |
サイズ /重量 | 幅354.8mm、奥行き226.6mm、高さ14.9~16.45mm / 約1.55kg |
バッテリー | 約7.3時間 |
本体デザイン
Zenbook 15 OLED UM3504DAの外観は、とてもスタイリッシュです。落ち着いたカラーでありながらASUSの「A」をイメージしたラインが描かれており、どこか先進的な雰囲気を漂わせています。プライベートはもちろん、ビジネスシーンでも違和感なく使えるでしょう。
サイズと重量
ノートPCとしてはもっともスタンダードな15.6インチタイプですが、同型タイプのなかではコンパクトです。特に奥行きが標準値より1cm程度短いため、ほかのノートPCよりも横長に見えます。
ディスプレイについて
画面サイズは15.6インチで、解像度は2880×1620ドット(16:9)。いわゆる2.8Kのディスプレイです。フルHDよりも映像が高精細で、文字のドット感も目立ちません。OLEDの色合いは非常に鮮やかで、ノートPCとしてはかなり高品質なパネルが使われています。
キーボードについて
キーボードのキーは十分なサイズではあるものの、配列にややクセがあります。入力時の手応えはしっかり感じられるものの、総合的にはタイプ感は軽め。指をあまり上げ下ろししない、軽いタッチで入力する人向きです。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 7735U(8コア/16スレッド) |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 680M(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ソフト『My ASUS』の「カスタマイゼーション」で、「ファンモード」を「パフォーマンスモード」に設定。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
ストレージ性能
ストレージとしては、512GBのPCie Gen4 x4 SSDが使われています。試用機で使われていたのは、マイクロンの2400シリーズ(QLC NAND使用)。アクセス速度はあまり速くはないのですが、熱対策で発熱量の少ないSSDを採用している可能性があります。
CPU性能
CPUとしては、Zen3+世代のRyzen 7 7735Uが使われています。CPUベンチマークテストの結果は非常に優秀で、ゲーミングノートPC向けCPU(末尾が「H」)と同等レベルのスコアがでした。かなり重い処理でも、問題なくこなせるでしょう。薄型ノートPCとしては、トップクラスのパフォーマンスです。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-12700H |
16039
|
Core i5-12500H |
14202
|
Ryzen 7 6800H |
13673
|
ZenBook15(Ryzen 7 7735U) |
11379
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Ryzen 5 6600H |
10237
|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Ryzen 7 7730U |
9293
|
Core i7-1260P |
9254
|
Ryzen 5 5600H |
9246
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8376
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-12700H |
1804
|
Core i5-12500H |
1715
|
Core i7-1260P |
1680
|
Core i5-1240P |
1606
|
ZenBook15(Ryzen 7 7735U) |
1549
|
Ryzen 7 6800H |
1532
|
Ryzen 5 6600H |
1477
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Ryzen 7 7730U |
1441
|
Ryzen 7 5825U |
1437
|
Ryzen 5 5625U |
1390
|
Ryzen 7 5800H |
1375
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。Ryzen 7 7735Uの内蔵グラフィックスはRDNA2ベースのRadeon 680M。スペック的には前世代のRyzen 7 6800Uと同じです。なお試用機では専用グラフィックスメモリー(VRAM)として4GBが割り当てられていました。
3Dベンチマークの結果は非常に優秀です。前世代のRyzen 7 6800Uとあまり変わりませんが、それでも専用GPU非搭載タイプとしてはトップクラス。数年前のゲーミングノートPCで使われていたGTX 1050やGTX 1050 Tiと同程度のパフォーマンスを実現しています。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
ZenBook15(Radeon 680M,4GB) |
2250
|
Radeon 680M(Ryzen 7 6800U) |
2211
|
Iris Xe(LPDDR) |
1528
|
Radeon (Vega) |
1204
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能差(DirectX 11)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
GTX 1050 Ti |
7658
|
ZenBook15(Radeon 680M,4GB) |
7087
|
Radeon 680M(Ryzen 7 6800U) |
6994
|
GTX 1050(2GB) |
6157
|
Iris Xe(LPDDR) |
4734
|
Iris Xe(DDR) |
3420
|
Radeon (Vega) |
3384
|
UHD(Core i3) |
1335
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は、大きくクリアーしています。なかでもひときわ目立つのが、コンテンツ制作(写真加工や動画編集、3D制作)テストのスコアの高さです。軽めの作品作りであれば、旧世代のゲーミングノートPCに匹敵するほどの性能と言っていいでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9869
9984
9409
10089
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
8854
9266
6968
7094
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
8298
5987
5525
4889
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶ThinkPad E14 Gen4 | Core i5-1235U / 8GB / UHD |
▶HP ProBook 450 G9 | Core i3-1215 / 8GB / UHD |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は、約7.3時間とされています。ただしこれはバッテリーの消費量を極力抑えた状態の結果で、実際の利用を想定した結果ではありません。
そこでビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から9時間56分でバッテリー残量が5%に達し、休止状態へ移行しました。公称値よりもだいぶ長い結果が出ています。
ただしRyzenシリーズはバッテリー駆動時にパフォーマンスがけっこう低下する場合があるため、実際の利用ではわずかに重く感じるかもしれません。とは言え高精細ディスプレイと高性能CPU搭載でこれだけもてば、十分と言っていいでしょう。
PCMark 10バッテリーテスト検証結果
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約7.3時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 9時間56分 |
充電率50%までの時間 | - | ※未計測 |
満充電になるまでの時間 | - | ※未計測 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
ゲーム性能
いくつかのゲーム系ベンチマークテストを試したところ、処理の思い重量級タイトルは厳しかったものの、中量級タイトルであれば画質を落とせば普通にプレーできそうな結果が出ました。ゲーミングノートPCとして利用するのには向きませんが、作業のあいまにちょっとしたタイトルで遊ぶくらいなら対応できそうです。
検証結果まとめ
- ・激重タイトルは不可
- ・レイトレも不可
- ・中量級タイトルは画質しだい
- ・競技系FPSは快適
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
サイバーパンク2077 (重い / DX12)
※起動不可
ファークライ6(そこそこ重い / DX12)
解像度と画質 | 平均FPS / 最小FPS |
フルHD 最高画質 | 28 / 22 |
フルHD 最低画質 | 44 / 35 |
アサシン クリード ヴァルハラ (激重)
解像度と画質 | 平均FPS / 低位1% |
フルHD 最高画質 | 23 / 9 |
フルHD 最低画質 | 43 / 27 |
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
フルHD 最高画質 | 54 / 32.6 |
フルHD 最低画質 | 120.8 / 75.3 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
レインボーシックス シージ(軽い) ※Vulkan
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
フルHD 最高画質 | 520 / 424 |
4K 最高画質 | 497 / 405 |
※最高画質設定。ゲーム内ベンチマークの結果
CS:GO FPS Benchmark(軽い)
画質 | 平均FPS |
フルHD 最高画質 | 124.73 |
フルHD 最低画質 | 165.98 |
※ワークショップ内のマップ「FPS Benchmark」を使用、画質は最高設定
値段は高いが満足度も高い
Zenbook 15 OLED UM3504DAの価格は、記事執筆時点で16万9800円(オフィスなしモデル)。安くはありませんが、ハイエンド機としては妥当な金額といったところでしょう。これより低いスペックでもっと高いノートPCはいくらでもあるので、その意味ではコスパは高め。軽量スリムで高性能、その上映像品質も高いとなれば、満足度は高いと思います。
残念なのは、メモリーがオンボードの16GBである点です。もはや16GBはハイエンドクラスではなく、スタンダードクラス。メモリースロットがあれば言うことなしなのですが、長期間ガッツリ使いたい人向けに32GBモデルも用意してほしいところです。
Zenbook 15 OLED UM3504D
*
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