デルの『Dell G16 7630』は、第13世代CoreプロセッサとRTX 40シリーズを搭載する16インチタイプのゲーミングノートPCです。高性能なCPUとGPUで、重いゲームでも快適に楽しめます。
現行世代ではエントリー(入門)クラスからミドルハイ(中上級)クラスに位置付けられますが、前世代と比較するとミドルレンジ(中級)からハイエンド(上級)に相当します。パーツの世代が上がって全体的に性能が大きく向上したのですが、筐体やキーボード、インターフェース類などの仕上がりはエントリー品質。また値段もそれなりに高く、仕上がりのわりにはやや割高な印象を受けました。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Dell G16 7630
スペック
OS | Windows 11 Home / Pro |
---|---|
ディスプレイ | 16インチ、2560×1600、WVA(広視野角パネル)、非光沢 、165Hz、3ms、sRGB 100%、G-SYNC対応 |
CPU | Core i7-13650HX(14コア20スレッド) / Core i9-13900HX(24コア32スレッド) |
メモリー | 16GB(8GB×2) ※DDR5-4800、最大32GB、スロット×2 |
ストレージ | 512GB / 1TB PCIe Gen4 x4 NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 4050(6GB) / RTX 4060(8GB) / RTX 4070(8GB) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、有線LAN(1Gb) |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力対応、RTX 4070モデルはThunderbolt 4対応)×1、USB3.2 Gen1 Type-A×3、HDMI2.1、有線LAN、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅356.98×奥行き288.73×高さ25.65mm / 約2.99kg |
バッテリー | 6セル86WHr ※駆動時間は非公開 |
本体デザイン
Dell G16 7630は、ゲーミングノートPCとしてはシンプルなデザインです。ゲーミングPCっぽい部分は、キーボードが1ゾーンのRGBバックライトであるだけ。派手さはないもののノートPCとしてはかなり大きく、ゴツさを感じます。
サイズと重量
前述のとおり、Dell G16 7630はかなり巨大です。大きくて重く、気軽に持ち運べる大きさではありません。しかしこれは画面が大きいのと、高性能なCPU / GPUを搭載しているため。高いパフォーマンスを実現するためと考えれば、ある程度の大きさは仕方ないでしょう。
ディスプレイについて
画面サイズは、一般的な15.6インチよりもわずかに大きい16インチ。アスペクト比16:10の2560×1600ドットに対応しています。リフレッシュレートは、エントリー向けの165Hz。eスポーツレベルの速い動きよりも、高精細な映像でゲームを楽しみたい人向きです。
キーボードについて
キーボードはゲーマー向けに配慮された作りではありません。しかし一般的なキーボードよりは、ゲームに向いています。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i9-13900HX(24コア32スレッド) |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 4070(8GB) |
最大グラフィックスパワー | 140W |
※各ベンチマークテストはまずWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定。さらに標準収録ユーティリティー「MyDell」の「電源マネージャ」→「設定」→「サーマルモード」を「超高パフォーマンス」に設定し、電源アダプターを接続した状態で実施しています。
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしてはインテル第13世代のCore i9-13900HX(24コア32スレッド)またはCore i7-13650HX(14コア20スレッド)が使われています。
Core i9-13900HX搭載の試用機で行なったCPUベンチマーク結果は、以下のグラフのとおり。ゲーミングノートPC向けCPUのなかではトップクラスの非常に優秀な結果です。平均値よりもやや低い結果が出ていますが、誤差と考えても問題ないでしょう。
ノートPC向けCPUの性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Core i9-13900HX |
11964
|
Dell G16 7630(Core i9-13900HX) |
11282
|
Core i7-13650HX |
8977
|
Core i7-13700HX |
8810
|
Core i9-13900H |
8428
|
Core i7-13700H |
7872
|
Core i9-12900H |
7861
|
Core i9-12900HK |
7711
|
Core i7-12700H |
7605
|
Core i5-13500H |
6512
|
Core i5-12500H |
6369
|
Core i5-12450H |
5249
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値
デスクトップPCとのCPU性能比較
デスクトップPC向けCPUとの比較すると、Core i9-12900Kよりやや下程度の結果でした。前世代のハイエンドゲーミングPCと同程度のCPU性能です。
デスクトップPC向けCPUの性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Core i9-13900K |
16488
|
Core i9-13900 |
15381
|
Core i7-13700K |
12683
|
Core i7-13700 |
12034
|
Core i9-12900K |
11878
|
Dell G16 7630(Core i9-13900HX) |
11282
|
Core i5-13600K |
10337
|
Core i7-12700K |
10144
|
Core i7-12700F |
9617
|
Core i5-13500 |
9117
|
Core i5-13400 |
7361
|
Core i5-12500 |
6099
|
Core i5-12400F |
5968
|
Core i3-13100 |
4238
|
Core i3-12100 |
4043
|
※スコアは3DMark公式サイトによる平均値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としてはNVIDIA RTX 4050(6GB) / RTX 4060(8GB) / RTX 4070(8GB)が使われています。今回試用したのはRTX 4070モデルで、現行世代ではミドルハイクラスの位置付けです。
3Dベンチマークテストの結果は以下のとおり。同じRTX 4070の平均値よりもわずかに低いのですが、それほど大きな差ではありません。これだけの性能であれば、重いゲームでも高度な動画編集でも問題なくこなせるでしょう。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12,WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
21665
|
RTX 4080 |
18891
|
RTX 3080 Ti |
13004
|
RTX 4070 |
12053
|
RTX 3080 |
12032
|
Dell G16 7630(RTX 4070) |
11921
|
RTX 3070 Ti |
11398
|
RTX 3070 |
10497
|
RTX 4060 |
10463
|
RTX 3060 |
8350
|
RTX 4050 |
8341
|
RTX 3050 Ti |
5345
|
RTX 3050 |
4852
|
RTX 2050 |
3531
|
GTX 1650 |
3445
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
レイトレーシングを含めた高負荷なテストでは、同じRTX 4070の平均値を上回る結果が出ています。これはおそらくCPUとして使われているCore i9-13900HXの影響が出ているのでしょう。こちらもなかなか優秀な結果です。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12 Ultimate)
GPU | 3DMark Speed Way Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
5612
|
RTX 4080 |
4705
|
RTX 3080 Ti |
3177
|
RTX 3080 |
3045
|
Dell G16 7630(RTX 4070) |
2874
|
RTX 4070 |
2821
|
RTX 3070 Ti |
2840
|
RTX 3070 |
2664
|
RTX 4060 |
2575
|
RTX 3060 |
1893
|
RTX 4050 |
1788
|
RTX 3050 Ti |
445
|
RTX 3050 |
427
|
RTX 2050 |
294
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
デスクトップ向けGPUとの比較
デスクトップPC向けGPUの3DMark平均値と比較したところ、Dell G16 7630 RTX 4070モデルの結果はRTX 4060 Ti未満RTX 3060 Ti以上といったところでした。ノートPCとしては、かなり優秀です。
GPU性能(DirectX 12,WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
36195
|
RTX 4080 |
28127
|
RTX 4070 Ti |
22746
|
RTX 3090 Ti |
21766
|
RTX 3090 |
19903
|
RTX 3080 Ti |
19600
|
RTX 4070 |
17861
|
RTX 3080 |
17654
|
RTX 3070 Ti |
14839
|
RTX 3070 |
13647
|
RTX 4060 Ti |
13447
|
Dell G16 7630(RTX 4070) |
11921
|
RTX 3060 Ti |
11726
|
RTX 4060 |
10622
|
RTX 3060 |
8733
|
RTX 3050 |
6204
|
GTX 1650 |
3555
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
ベンチマークテストの結果は非常に優秀です。特にコンテンツ制作のテストでは、旧世代のCPU / GPUを搭載したハイエンド機のスコアを上回っています。ゲームだけでなく、さまざまなシーンで従来機よりも快適に活用できるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10618
10901
9769
10659
9484
10581 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
10224
7429
9077
10494
9063
10293 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
12852
6936
7843
11614
9275
12548 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
HP Pavilion 14 Plus | Core i7-12700H / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Victus 16 | Ryzen 5 6600H / 16GB / RTX 3050 |
Legion Slim 770i | Core i7-12700H / 16GB / RTX 3060 |
▶OMEN 16 | Ryzen 7 5800H / 16GB / RTX 3070 |
Titan GT77 12U | Core i9-12900HX / 64GB / RTX 3080 Ti |
熱と騒音について
※今回は計測データを誤って消してしまったため、掲載できる内容がありません。
ゲーム性能
Core i9 + RTX 4070モデルでゲーム系ベンチマークを試したところ、非常に優秀な結果が出ました。特にRTX 40シリーズから採用されたDLSS3の対応タイトルでは、フレームレートがかなり伸びる傾向にあります。レイトレ対応タイトルも、フルHDであれば快適に楽しめるでしょう。
検証結果まとめ
- ・激重タイトルでも2560×1600でOK
- ・レイトレはDLSS FGありの1920×1200
- ・DLSS3は効果抜群
- ・中量級FPSは画質調整で165 fps張り付き
- ・競技系FPSは外部出力で240Hz可能
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
サイバーパンク2077 (重い / DX12)
1920×1200
画質 ※DLSS:自動 | 平均FPS / 最低FPS |
レイトレーシング:オーバードライブ DLSS FG | 53.45 / 35.62 |
レイトレーシング:オーバードライブ | 30.18 / 21.09 |
レイトレーシング:ウルトラ DLSS FG | 79.91 / 64.77 |
レイトレーシング:ウルトラ | 58.39 / 39.24 |
ウルトラ DLSS FG | 127.19 / 54.74 |
ウルトラ | 88.25 / 27.99 |
2560×1600
画質 ※DLSS:自動 | 平均FPS / 最低FPS |
レイトレーシング:オーバードライブ DLSS FG | 40.81 / 5.72 |
レイトレーシング:オーバードライブ | 26.57 / 3.49 |
レイトレーシング:ウルトラ DLSS FG | 44.39 / 4.97 |
レイトレーシング:ウルトラ | 66.11 / 47.94 |
ウルトラ DLSS FG | 92.23 / 80.17 |
ウルトラ | 53.33 / 33.39 |
Portal with RTX(激重)
解像度と画質 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 DLSS FG | 84.6 / 69 |
1920×1200 | 53.5 / 47.5 |
2560×1600 DLSS FG | 52 / 40.6 |
2560×1600 | 31.2 / 24.2 |
※最高画質
ファークライ6(そこそこ重い / DX12)
解像度と画質 | 平均FPS / 最小FPS |
1920×1200レイトレ 最高画質 | 91 / 80 |
1920×1200 最高画質 | 111 / 92 |
2560×1600 レイトレ 最高画質 | 69 / 61 |
2560×1600 最高画質 | 80 / 30 |
アサシン クリード ヴァルハラ (激重)
解像度と画質 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 最高画質 | 104 / 64 |
2560×1600 最高画質 | 74 / 48 |
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 最高画質 | 240.1 / 164.5 |
1920×1200 最低画質 | 298.3 / 230.3 |
2560×1600 最高画質 | 183.3 / 132.2 |
2560×1600 最低画質 | 278.3 / 182.2 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
レインボーシックス シージ(軽い) ※Vulkan
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
1920×1200 最高画質 | 284 / 213 |
2560×1600 最高画質 | 282 / 240 |
※最高画質設定。ゲーム内ベンチマークの結果
CS:GO FPS Benchmark(軽い)
画質 | 平均FPS |
1920×1200 | 407.17 |
2560×1600 | 289.43 |
※ワークショップ内のマップ「FPS Benchmark」を使用、画質は最高設定
ストリートファイター6ベンチマーク
画質 | スコア(Max:100) / 格闘モード時のフレームレート |
1920×1200 最高画質 | 100 / 59.99 fps |
2560×1600 最高画質 | 100 / 59.97 fps |
※画質プリセット「HIGHEST」、ウィンドウモード、フレームレート上限120
パーツ性能と筐体の品質がアンバランス
記事執筆時点(2023年7月中旬)で、Dell G16 7630の価格は19万5921円から(RTX 4060モデル)。今回試用したCore i9&RTX 4070モデルなら25万円台です。Core i9とRTX 4070の組み合わせとしては最安クラスではあるものの、筐体の仕上がりがエントリー向けであるので、やや割高感があります。特にキーボードの仕上がりは、20万円クラスの製品としてはやや厳しいかもしれません。パーツ性能は高いのに筐体の仕上がりはやや安っぽく、アンバランスな印象を受けます。
現在のところRTX 4050 / 4060モデルは割高感があるので、狙うならCore i9 & RTX 4070モデルがいいかもしれません。品質面についても、外付けのキーボードやディスプレイなどを使えば、ある程度は解決できるでしょう。ただそれらのゲーミングデバイスをそろえると、最終的にハイエンドクラスのゲーミングノートPCと同程度の金額になりそうなのが悩ましいところです。
Dell G16 7630
*
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