Beelinkの『MINI S12 Pro』(以下、”Beelink S12 Pro”)は、人気のIntelプロセッサーN100を搭載するミニPCです。価格が安いながらも、性能はちょっとした軽作業には十分。ガッツリ作業するのには向いていませんが、ネットの調べ物や写真・動画の管理などには普通に使えます。
記事執筆時の価格
モデル | 価格 |
---|---|
N100 / 16GB / 500GB | 2万3000円前後 |
※2023年11月13日時点
価格は2万円台前半で、16GBメモリーと500GB SSDを搭載している安さがポイント。容量だけで見れば、非常に高コスパです。ただし製品品質以外の部分――Windowsのライセンスと技適(電波機器の認証)周りでグレーな部分があります。
ポイント
- ✅要クリーンインストール
- ✅技適周りが微妙
- ✅静音性は高い
- ✅Type-C非対応
- ✅16GBメモリーで2万円台
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売 | 2023年春 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア4スレッド) |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
メモリー | 16GB×1 ※スロット1基、DDR4-3200、最大16GB |
ストレージ | 500GB SSD ※Type-2280 NVMeで最大800MB/秒 |
インターフェース | USB3.2 Gen2×4(前面2+背面2)、HDMI(4K60Hz)×2、3.5mmステレオジャック、有線LAN |
拡張スロット | なし |
ドライブベイ | 2.5インチ×1 |
通信 | Wi-Fi 6 + BT 5.2 + 有線LAN(1Gbps)×1 |
サイズ / 重量 ※実測値 | 幅115.6mm、奥行き102.6mm、高さ39.6mm / 269g |
付属品 | 電源ケーブル、HDMIケーブル×2、取り付けマウンタなど |
オフィス | なし |
Windowsのラインセンス
Beelink S12 Proでは、個人利用できないWindows 11のボリュームライセンスが使われています。そのままではメジャーアップデートを適用できない可能性があるので、Windows 11のメディア作成ツールなどを使って、クリーンインストールしてください。なおその際に、フリーソフトなどを使ってドライバーをバックアップしておくことをお忘れなく。忘れてしまった場合は、メーカー公式サイトからドライバーをダウンロードできます。
関連リンク
Windows 11をダウンロードする(マイクロソフト公式サイト)
製品サポート(Beelink公式サイト)
認証マークについて
Beelink S12 Proには、無線機器の利用に必要な技適マークがありません。ただし認証を受けた無線モジュール「AX101D2W」が使われています。そのことから技適マークが必要ないと判断しているのかもしれませんが、これがアリなのかナシなのかは筆者に判断できませんでした。
関連リンク
本体デザイン
パッケージ
外観
TRIGKEY G4シリーズとの関係について
筆者はTRIGKEYというメーカーの「TRIGKEY G4」というミニPCを持っているのですが、Beelink S12 Proと天板の見た目以外はソックリです。ほぼ同じ製品と考えていいでしょう。どちらも同じOEMを使っているのか、もしくはどちらか一方がもう一方のOEM供給元なのかもしれません。
インターフェース構成
メモリー/SSDの増設について
本体の分解方法
メモリーの増設方法
ストレージの増設・換装
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
---|---|
メモリー | 16GB DDR4-3200 |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは、ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に設定した上で実施しています。ちなみに電源プランを「高パフォーマンス」に変更しても、ほとんど差は出ません
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けでAlder Lake-N世代のIntelプロセッサーN100が使われています。4コア4スレッドで動作するCPUで、TDP(消費電力量の目安)は標準で6W。ただし6Wあたりで動作するのは待機時だけで、高負荷時には18~21Wあたりで動作していました。
Intel N100搭載のTRIGKEY GREEN G4CPUでCPUベンチマークテストを行なったところ、同CPU搭載の他社製品とほぼ同等の結果が出ました。多少の差はあるものの、体感的に大きく変わるほどではありません。
激安ミニPCの性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
SkyBarium Mini PC(N100) |
6274
|
LarkBox X 2023(N100) |
6235
|
Beelink S12 Pro(N100) |
6188
|
HeroBox 2023(N100) |
6165
|
TRIGKEY GREEN G4(N95) |
5787
|
Intel N100 PassMark平均 |
5620
|
Intel N95 PassMark平均 |
5425
|
※PassMark平均はPassMark CPU Benchmarksによる集計値、そのほかは当サイトの計測値
低価格なミニPCで使われているCPUと比較すると、わりと性能が低いことがわかります。ただ実際に使ってみるとわかりますが、ネットの調べものやメール、ちょっとしたメモなどを行なうには十分です。
ミニPC向けCPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i5-13500H |
24011
|
Ryzen 7 5800H |
21256
|
Ryzen 7 6800U |
20598
|
Ryzen 7 5800U |
18670
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
18517
|
Core i5-12450H |
17812
|
Ryzen 5 5600H |
17119
|
Ryzen 5 5600U |
15462
|
Intel N305 |
10050
|
検証機(N100) |
6188
|
Intel N100 |
5630
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
ミニPC向けCPUの性能比較(シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Single Threaded |
---|---|
Core i5-13500H |
3538
|
Core i5-12450H |
3473
|
Ryzen 7 6800U |
3208
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
3180
|
Ryzen 7 5800H |
3060
|
Ryzen 7 5800U |
3048
|
Ryzen 5 5600H |
2964
|
Ryzen 5 5600U |
2916
|
Intel N305 |
2252
|
検証機(N100) |
2086
|
Intel N100 |
1971
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(RDNA 2) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Vega) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
検証機 |
318
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
SSDはPCIe 3.0のNVMeタイプですが、アクセス速度はかなり低速です。SATA接続のSSD(500MB/秒程度)よりは多少マシですが、NVMeのメリットはあまりありません。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
一般的な利用(Web閲覧やビデオ会議)のテストでは目標値を大きくクリアーしているものの、ビジネス利用(表計算やワープロ)とコンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値を下回っています。ごく軽い作業向けです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
6913
7142
7957
10603
10299
10256 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
4483
4879
5300
9709
7128
9930 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
2440
2515
3962
6044
6586
5707 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
▶MINISFORUM UN305 | Core i3-N305 / 8GB / UHD |
▶NucBox10 | Ryzen 7 5800U / 16GB / Radeon |
▶IdeaCentre Mini Gen 8 | Core i5-13500H / 8GB / UHD |
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
CPUの発熱について
※計測時の室温は21度。室温が変わると、結果が異なる場合があります
高負荷時におけるCPU温度を計測したところ、平均温度は89度とけっこう高めでした。終盤には96度にまで達しており、それに伴って消費電力も増減を繰り返しています。温度が徐々に高まっている点を考えると、もしかするとうまく排熱できていないのかもしれません。
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、実作業中はほとんど聞こえません。高負荷のCPUベンチマークテストにほんのわずかに音が聞こえる程度でした。静音性については、かなり優秀です。
駆動音の計測結果
電源オフ | 36.5dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 36.7dBA前後 | ほぼ無音 |
軽作業中 | 36.7dBA前後 | ほぼ無音 |
高負荷時 | 36.9dBA前後 | 耳を近づければファンの回転音がわずかに聞こえる程度 |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
あえて選ぶ理由はない機種
製品自体は、スタンダードなミニPCです。筐体や端子類で安っぽい部分はありますが、価格が2万円台前半であることを考えればこんなものでしょう。個人的には、静音性が非常に優秀な点については高評価です。
ただしWindowsのライセンスと技適マークのあたりに見られるように、メーカーとしての姿勢にずさんな印象を受けます。やはり、守るべきルールはきっちり守ってこそでしょう。同程度の価格でちゃんとしているメーカーはいくらでもあるので、あえてリスクを取る必要はないと思います。
*
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