レノボの『Yoga 9i Gen 8 14型(第13世代Intel Core)』(以下、”Yoga 9i Gen 8 14型″)は、ハイエンドクラスの2-in-1ノートPCです。高性能な第13世代Core i7-1360P搭載で、ディスプレイは2.8K OLED。さらに4つのスピーカーを搭載することで、ノートPCとしては高い音質を実現しています。
記事執筆時の価格
スペック | 価格 |
---|---|
Core i7-1360P / 16GB / 512GB | 21万0533円 |
Core i7-1360P / 16GB / 1TB ※カスタマイズ対応 | 23万7314円 |
※2023年10月30日時点
実際に使ってみると、仕上がりについては完成度の高さを感じます。キーボードのタイプ感がペチペチとしていますが、軽めに入力する人なら違和感は少ないでしょう。ただ位置付け的にはあくまでもスタンダードノートPCなので、この金額を出せるかどうかは判断がわかれるところだと思います。
ポイント
- ✅CPUベンチは優秀
- ✅美しい映像の2.8K OLED
- ✅スピーカー4基で高音質
- ✅デジタルペン付属
- ✅タイプ感はややチープ
- ✅値段は高い
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
発売日 | 2023年4月4日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 14インチ、2880×1800、OLED、100% DCI-P3、光沢、400nit、90Hz、HDR500、タッチ対応 |
CPU | Core i7-1360P |
メモリー | 16GB LPDDR5-5200 ※オンボード |
ストレージ | 512GB / 1TB NVMe Gen4 SSD(TLC) |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | Thunderbolt 4×2、USB3.2 Gen2 Type-C(PD/DP)×1、USB3.2 Gen2×1、ヘッドホン端子 |
生体認証 | 指紋センサー、IRカメラ |
サイズ / 重量 | 幅318×奥行き230×高さ15.25mm / 約1.4kg |
バッテリー | 約15時間 |
本体デザイン
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-1360P |
---|---|
メモリー | 16GB LPDDR5-5200 |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Lenovo Vantage」の「電源およびパフォーマンス」を標準の「インテリジェント・クーリング」に変更(一部のテストを除く)。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第13世代のCore i7-1360P(12コア16スレッド、PBP 28W、最大64W)が使われています。高性能な第13世代のなかでもハイエンドノートPC向きのパワフルなCPUです。
パフォーマンス設定を標準(インテリジェント・クーリング)と最大(エクストリーム・パフォーマンス)に変えてテストを行なったところ、非常に優秀な結果が出ました。特に最大設定では、薄型ノートPC向けCPUとしてはトップクラスです。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
検証機(Core i7-1360P,最大) |
23238
|
Ryzen 7 7735U |
21043
|
Core i5-1340P |
20760
|
検証機(Core i7-1360P,標準) |
19803
|
Core i7-1360P |
19623
|
Ryzen 7 7730U |
18979
|
Core i5-1335U |
18240
|
Ryzen 5 7535U |
17163
|
Ryzen 5 7530U |
16196
|
Core i7-1355U |
15636
|
Core i3-1315U |
13033
|
Ryzen 3 7330U |
10909
|
Core i3-N305 |
10265
|
Ryzen 5 7520U |
9759
|
Ryzen 3 7320U |
9249
|
Intel N100 |
5620
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
軽めの作業に影響するシングルスレッドのテストでは、どちらのモードでも非常に優秀な結果が出ています。一般的な作業であれば、快適に行なえるでしょう。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
検証機(Core i7-1360P,最大) |
4130
|
検証機(Core i7-1360P,標準) |
4121
|
Core i7-1360P |
3670
|
Core i5-1335U |
3665
|
Core i7-1355U |
3606
|
Core i3-1315U |
3573
|
Ryzen 7 7735U |
3289
|
Ryzen 7 7730U |
3228
|
Ryzen 5 7530U |
3136
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3089
|
Ryzen 3 7320U |
2485
|
Core i3-N305 |
2279
|
Intel N100 |
1971
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
シングルスレッドのスコアをデスクトップPC向けCPUと比較すると、第12世代のCore i7-12700以上、第13世代Core i7-13700未満とのことでした。ノートPCとしては驚くべき性能です。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-13700 |
4168
|
検証機(Core i7-1360P,最大) |
4130
|
Core i7-12700 |
3940
|
Core i7-11700 |
3158
|
Core i7-10700 |
2916
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
ただこの結果はちょっと高すぎのような気がします。別に意図的に調整されているわけではないと思いますが、試用機固有の可能性もあるので「タイミングしだいではそんな可能性もある」程度に考えてください。
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のIris Xe Graphicsが使われます。検証機で3Dベンチマークを行なったところ、同構成機としては妥当な結果が出ました。ゲームやグラフィックスソフトで多少の効果が見込めますが、大作ゲームや高度な動画編集を行なえるほどではありません。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(RDNA 2) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Yoga 9i(Core i7,LPDDR) |
1515
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Vega) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
テストはパフォーマンス設定が標準の「インテリジェント・クーリング」のみで行ないました。すべてのテストで目標値を大きく超えており、全体としてはなかなか優秀です。ただし負荷の高いマルチコア性能が要求されるビジネス利用(高度なワープロや高度な表計算)では、スコアがやや落ちています。これは、CPUの熱が影響する機種でよく見られる現象。Yoga 9i Gen 8 14型でも、熱の影響が出ているのかもしれません。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
11364
10616
9882
10917
10258
10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7859
10003
6966
9572
7417
7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
6993
6018
5500
6536
6026
6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶Vostro 15 3550 | Core i5-1335U / 16GB / Iris Xe |
▶IdeaPad Flex 5 Gen 8 | Ryzen 7 7730U / 16GB / Radeon |
▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は、公称値で最大 約15時間とされています。しかし公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこで実機を使って最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から8時間35分で休止状態へ移行しました。公称値よりも短い結果でしたが、日常的なビジネス利用でこれだけもてば十分でしょう。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。なおバッテリー駆動時は、電源接続時に比べてパフォーマンスが2~3割低下することがあるので注意してください。
バッテリー駆動時間の計測結果
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約15時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 8時間35分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 1時間12分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間53分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
熱と騒音について
本体の熱について
検証機では高負荷なベンチマーク中に、キーボード上部が熱く(温かくではなく、熱く)感じました。とは言え、触れないほどではなありません。
CPUの熱について
CPUの熱の計測は、標準設定(インテリジェント・クーリング)と最大設定(エクストリーム・パフォーマンス)の2パターンで行ないました。
標準設定では、CPUの平均温度が68.79度とかなり低めに出ています。実際には開始直後に温度がドンと上がり、そこから徐々に下がったり上がったりを繰り返していました。普通はいちど下がったらそのままが多いので、少し珍しいパターンです。この動きにより、温度を抑えながらも高いパフォーマンスを実現しているのでしょう。
最大設定の平均温度は77.5度とあまり高くはありませんが、テスト開始から1分あたりまでは85~97度を超える高い温度が続いています。またセンサーを確認すると、一部のコアでサーマルスロットリングが発生していました。高温状態は短時間なので、あまり大きな影響はないでしょう。
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、高負荷時に多少大きく聞こえます。うるさすぎるほどではありませんが、外出先で利用するなら標準設定で利用するといいでしょう。
駆動音の計測結果
電源オフ | 37.3dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 37.5dBA前後 | ほぼ無音 |
高負荷時(インテリジェントクーリング) | 41.3BA前後 | 排気音とファンの回転音がハッキリと聞こえる。うるさくはないが、静かな場所では音がそれなりに気になる |
高負荷時(エクストリーム・パフォーマンス) | 45.8dBA前後 | 排気音が大きい。うるさくは感じないが、静かな場所では周囲への配慮が必要 |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
完成度は高いが値段もお高い
キーボードがやや安っぽく感じる点を除けば、非常に完成度の高い仕上がりだと思います。見た目も質感良く、パフォーマンスも十分すぎるほど。なかでも2.8K OLEDディスプレイは、息をのむほどの美しさです。クアッドスピーカーによる迫力のあるサウンドも、言うことありません。
ただ21万円(記事執筆時)は、ちょっと躊躇してしまう値段です。MacB◯◯k(伏せ字)よりは安いかもしれませんが、WindowsノートPCとしてはなかなかの高額モデルでしょう。薄さとディスプレイ品質とパフォーマンスの面でピンときて値段が障壁にならないなら買ってもいいとは思いますが、そうでないなら型落ちして値段が下がるまで待つのもアリ。
*
当サイトでは2~3万円台の格安ノートPCから高性能ノートPCまで、さまざまな最新モデルを検証・解説しています。記事の更新情報やお買い得情報を当サイトのツイッターアカウントでお知らせしているので、ぜひフォローをお願いします。
ツイッターでこまめブログをフォローする
関連記事
ノートPCのレビュー一覧
お買い得情報一覧