HPの「HP ENVY 16-h0000」シリーズは、グラフィックス機能としてGeForce RTX 3060を搭載するスリム型ノートPCです。高性能な第12世代Coreプロセッサ Hシリーズと32GBの大容量メモリー搭載で、高度なソフトを使ったクリエイティブワークに向いています。

HP HP ENVY 16-h
ただし熱が上がりすぎないように、パフォーマンスをやや落としているように見受けられます。一般的なノートPCよりもはるかに高性能ではありますが、ゲーミングノートPCほどではありません。GPU搭載機には見えない、スリムタイプのノートPC的な位置付けです。

第12世代Core i7/i9 HシリーズとGeForce RTX 3060を搭載した高性能モデル。さらにディスプレイは120Hzの高リフレッシュレート対応で、画面の動きがとてもなめらかです
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。なお今回試用したのは発売前のサンプル機のため、作りや性能の部分で市販モデルと一部異なる場合があるかもしれません。あらかじめご了承ください。

HP HP ENVY 16-h0000
スペック
OS | Windows 11 Pro |
---|---|
ディスプレイ | 16インチ 16:10 400nit 光沢 タッチ非対応 |
パネル | 2560×1600 IPS sRGB 100% / 3840×2400 OLED DCI-P3 100% |
CPU | Core i7-12700H / Core i9-12900H |
メモリー | 32GB(16GB×2) DDR5-4800 |
ストレージ | 1TB / 2TB PCIe Gen4 x4 NVMe SSD |
グラフィックス | GeForce RTX 3060(6GB) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 |
インターフェース | Thunderbolt 4 / USB4(USB PD充電 / 映像出力対応)×2、USB Type-A Gen2×2、microSDカードスロット、HDMI2.1、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
生体認証 | 顔認証 |
サイズ / 重量 | 幅357.4mm、奥行き252.4mm、高さ19.9mm / 約2.67kg |
バッテリー | 最大5時間30分(Core i7) / 最大5時間(Core i9) |
本体デザイン

HP HP ENVY 16-hの外観。本体カラーはナチュラルシルバー

キリッとしたスタイリッシュなシルエットですが、側面はふっくらとやや丸みを帯びています。最近の流行である「ラウンドエッジデザイン」を取り入れたフォルム

ボディは質感と剛性に優れるアルミ製。表面はツヤ消しのサラサラとした手触りで、指紋の跡は残りません

Wi-Fi電波の感度を強化するためアンテナライン。一般的には上部のほうが感度が上がりますが、下部のほうが目立ちません

キーボード面もシルバー

ベゼルは左右がかなり細く作られています

インターフェース類は多くはないものの十分な構成。ただ据え置き用なら有線LAN端子があればよかったかもしれません。端子類が足りない場合は、Thunderbolt 4ドックを使うといいでしょう

電源アダプターは200Wの丸口タイプ。重さは599gで、かなり巨大です。高性能なCPU / GPUを搭載しているのである程度の大きさは仕方がありませんが、ゲーミングPCと同じものではなく本体のデザインに合わせて欲しいところ

スピーカーは全部で4基。底面は低音向けです。音の解像感は高いのですが、ややこもった印象を受けます

キーボード両サイドは高音向け。音はクリアーでサラウンド感も上々です

ディスプレイ上部にはWebカメラと顔認識用のIRカメラ。IRカメラはまったく目立たなく、どこにあるのかわからないほど

Webカメラは500万画素。写真撮影は2560×1440ドットの3.7万画素、ビデオ撮影は1440p 30fpsに対応しています。個人的には1080p 60Hzにも対応してほしかったところです

排気口はこの部分。温風が一度ヒンジに当たるので、ディスプレイに直接吹き付けられることはありません

底面部には大きめの通気口が設けられています
サイズと重量

本体サイズは幅357.4mm、奥行き252.4mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。大きさ的にはほぼB4サイズです

厚さは実測で21.6mm(突起部を除く)

本体背面。底面部のゴム足(突起部)を含めた高さは25.6mm

設置時にはやや厚みを感じますが、高性能CPU / GPUを搭載したモデルとしてはとてもスリムです

重さは実測で2.377kg。一般的なノートPCよりもやや重めですが、同じ構成のゲーミングノートPCとは同程度です
ディスプレイについて

ディスプレイのサイズは16インチ。解像度は2560×1600ドットのWQXGAと、3820×2400ドットのUHD+(4K+)が用意されています。今回試用したのはWQXGAモデル

試用したWQXGAモデルはIPSパネルで、色域はsRGB 100%。UHD+モデルはOLEDパネルで、DCI-P3 100%の広い色域に対応しています

一般的なIPSパネルでも、ほかのノートPCより発色がよく色鮮やかです。色域の測定結果は標準的なので、画質改善ユーティリティ「HP Display Control」が効いているのかもしれません
色域測定結果(IPSモデル)
sRGBカバー率 98.5% | sRGB比 102.5% |
DCI-P3カバー率 75.4% | DCI-P3比 75.6% |
Adobe RGBカバー率 75% | Adobe RGB比 76% |

sRGB 100%対応のほかのノートPCに比べてコントラストが高く、色に深みが感じられます。輝度は400nitとのことですが、筆者の計測では167nitしかありませんでした

ただしディスプレイの表面が光沢ありのグレア仕上げのため、映り込みはハッキリと出ています

照明や背景などが映り込む場合があるので、気にならない角度に調整して使うといいでしょう
キーボードについて

キーボードはテンキーなしの日本語配列で、バックライトに対応しています

テンキーがないぶん大きさに余裕があり、配列に違和感がありません。気になるところを強いて言うなら、カーソルキーが小さい点くらい

F1キーを押すと顔文字入力モードになるのがユニーク

キーピッチは実測で19mmと十分なサイズ。キー配置に違和感はなく、使い始めから普通に使えます。入力時にカクッとした手応えがあるものの、キーストロークはやや浅め。指をあまり上げ下ろしせずに、軽いタッチで入力する人向きです

軽い力で入力してもカタカタとわずかに音が聞こえますが、基本的には静音性の高いキーボードです。ただし打ち下ろすようにして入力するとパチパチと音が響くので注意
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-12700H |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3060 (6GB) |
最大グラフィックスパワー | 95W |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCore i7-12700HまたはCore i9-12900Hが使われています。Core i7-12700H搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、シングルコア性能については同CPU搭載の他機種と遜色ない結果でしたが、マルチコア性能のテストではスコアが大きく低下しました。おそらくCPUの熱が上昇しすぎるのを防ぐために、あえてパフォーマンスを落としているのかもしれません。
スリムタイプのクリエイティブワーク用ノートPCならよくあることですが、それにしてもちょっとパフォーマンスを落としすぎかなという印象です。マルチスレッドで動作する高度な処理は避けたほうがいいかもしれません。動画のエンコードについてはCPUレンダリングではなく、GPUの機能(NVEnc)を使ったほうがいいでしょう。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
21119
|
Core i7-12700H |
15066
|
Ryzen 7 6800H |
13407
|
Ryzen 9 5900HX |
12654
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Core i7-11800H |
11123
|
HP ENVY 16(Core i7-12700H) |
10964
|
Ryzen 5 5600H |
8901
|
Core i5-11400H |
7529
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
1906
|
Core i7-12700H |
1806
|
HP ENVY 16(Core i7-12700H) |
1789
|
Ryzen 7 6800H |
1532
|
Core i7-11800H |
1502
|
Core i5-11400H |
1461
|
Ryzen 9 5900HX |
1459
|
Ryzen 7 5800H |
1375
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、GeForce RTX 3060が使われています。3Dベンチマークテストを行なったところ、同GPU搭載機種の平均値を15~16%程度下回る結果が出ました。おそらくCPUと同様に、熱対策としてあえてパフォーマンスを下げているのでしょう。
ただクリエイティブワーク向けのノートPCはゲーミングノートPCのように常時GPUをフル稼働させているわけではないので、作業にそれほど大きな影響は出ないはずです。
GPUの性能 (DirectX 12、WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
13493
|
RTX 3080 |
11612
|
RTX 3070 Ti |
10357
|
RTX 3070 |
9707
|
RTX 3060 |
8297
|
HP ENVY 16(RTX 3060) |
6991
|
RTX 3050 Ti |
5207
|
RTX 3050 |
4426
|
GTX 1650 |
3178
|
Iris Xe (Core i7) |
1250
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (DirectX 11、フルHD)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
30787
|
RTX 3080 |
28274
|
RTX 3070 Ti |
25538
|
RTX 3070 |
25161
|
RTX 3060 |
21476
|
HP ENVY 16(RTX 3060) |
18264
|
RTX 3050 Ti |
13528
|
RTX 3050 |
11051
|
GTX 1650 |
8758
|
Iris Xe (Core i7) |
4486
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (レイトレーシング)
GPU | 3DMark Port Royal Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
8527
|
RTX 3080 |
7148
|
RTX 3070 |
5957
|
RTX 3060 |
4909
|
HP ENVY 16(RTX 3060) |
4094
|
RTX 3050 Ti |
585
|
RTX 3050 |
537
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
ベンチマークテストの結果は非常に優秀です。ただコンテンツ制作のテスト結果を見ると、第11世代Core i7 + RTX 3060搭載のゲーミングノートPCよりもやや低い結果が出ています。性能的には第12世代の恩恵を受けているわけではありません。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10874
9477
10606
9667
10024
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
9664
6534
8578
8530
8593
8766 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
9163
5363
7972
8109
9988
10284 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶Inspiron 16 Plus | Core i7-11800 / 16GB / RTX 3050 |
▶GALLERIA XL7C-R36 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3060 |
▶GALLERIA UL7C-R37 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3070 |
クリエイティブ性能
UL Procyonは、アドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測するベンチマークテストです。「Photo Editing」ではPhotoshopとLightroom Classicを、「Video Editing」ではPremiere Proを利用します。
Core i7-12700H搭載の試用機でテストを行なったところ、写真の現像と加工については非常に優秀な結果が出ています。CPU性能が強く影響するテストではあるものの、複合的な性能が関係すると高いパフォーマンスを発揮できるようです。CPUが長時間フル可動しない影響もあるのでしょう。
動画編集については、GPU性能を考えれば妥当なレベルです。ただCPU本来の性能を考えれば、もっと高いスコアが出ていいのかもしれません。とが言えゴリゴリの超高度な編集でなければ、問題なく使えると思います。
Procyonベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Photo Editing ※写真加工全般 |
7432
5677
6019
6358
7406
7121
7577 |
Image Retouching ※Photoshop中心 |
6751
6180
6330
6765
6708
6673
7041 |
Batch Processing ※Lightroom中心 |
8408
5215
5725
5976
8178
7601
8155 |
Video Editing ※Premiere |
5604
2495
3910
4578
5351
6299
6478 |
比較機のスペック
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB |
---|---|
▶Surface Studio | Core i7-11370H / 16GB / RTX 3050 Ti |
▶Inspiron 16 Plus | Core i7-11800 / 16GB / RTX 3050 |
▶raytrek R5-CA | Core i7-10875H / 16GB / RTX 3060 |
ROG Zephyrus M16 GU603 | Core i7-11800H / 32GB /RTX 3070 |
▶Alienware x17 R1 | Core i9-11980HK / 32GB /RTX 3080 |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間はCore i7モデルで約5時間30分、Core i9モデルで約5時間とされています。ただし公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこでCore i7モデルを使ってビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から3時間8分で休止状態へ移行しました。かなり短いのですが、消費電力の高い高性能CPU / GPUおよび高解像度ディスプレイを搭載していることを考えればやむを得ないでしょう。電源プランや画面の輝度を変更すれば駆動時間はさらに延びる可能性があるものの、GPUを使うクリエイティブワークではさらに駆動時間が短くなる可能性もあります。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Core i7モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約5時間30分 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 3時間8分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 36分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間23分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
GPU搭載機に見えないスリムなノートPC
ベンチマーク結果を見ると、GPU搭載のプレミアムノートPCとしてはスコアがやや低めです。ただしこれは前述のとおり、熱対策でCPUとGPUのパフォーマンスをあえて落としているため。スリムなデザインを実現するために、支障がないと判断できるギリギリのレベルまでチューニングしているものと思われます。性能よりも見た目を重視しているような印象を受けました。

第12世代のHシリーズ & RTX 3060搭載機には見えないスリムなデザイン
そのため、クリエイティブワークであればCPUやGPUに極端な負荷のかからない写真 / 画像の加工に向いています。動画編集や3D制作であれば小~中規模な作品であれば問題ないでしょう。長時間の4K動画をCPUでエンコードするような使い方には不向きです。また作業をしながらの動画配信であれば、もう少しパワーが欲しいところ。クライアントとの打ち合わせでデータを確認したり、3Dやアドビのソフトを扱えるサブPCとして使うのにはピッタリです。

HP HP ENVY 16-h0000
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